>>> 「失業、帰国費用欲しかった」ブラジル人2人逮捕当ブログでは以前より、非正規雇用労働者の救援を求める声や、あるいは、もろもろの事情で生活保護などの社会保障制度のお世話になっている人を攻撃する方々の言説を取り上げて来、批判してまいりましたが、これらの言説のなかには「アリとキリギリス」の話を現実世界にそのまま適応しようとする困った人たちがいました。曰く、「努力しないからこういうことになった。自己責任。こんなやつらに税金で食わせる必要は無い。」と。まさに『アリとキリギリス』の世界観を現実世界に直輸入する方々によるものでした。
強盗傷害容疑
大泉署は22日、いずれもブラジル国籍の栃木県小山市駅東通り、派遣社員デ・ソウザ・イボネ・ジュンコ・キヨタ(40)と、大泉町寄木戸、無職ヴァレリア・カンポス・シルバ・キヨタ(33)の両容疑者を強盗傷害の疑いで現行犯逮捕した。
発表によると、2人は共謀して同日午前8時30分ごろ、大泉町寄木戸、女性会社役員(58)が銀行に出かけようと自宅の玄関から出てきたところを待ち伏せ、殴るけるの暴行を加えて女性が持っていた手提げバックを奪い、女性の顔などに軽いけがをさせた疑い。
2人は走って逃げようとしたが、女性の悲鳴を聞いて自宅から飛び出してきた家族らに取り押さえられた。バッグには現金約760万円が入っていた。
同署幹部によると、2人は義理の姉妹で、シルバ容疑者は1週間前に勤め先を解雇され、ジュンコ容疑者も25日に派遣会社を解雇される予定だった。シルバ容疑者は調べに対し、「2人の子どもとブラジルに帰るために金が欲しかった」と話しているという。
(2008年12月23日 読売新聞) <<<
しかし実際は、「キリギリス」は、物語中のように大人しく死んではくれず、このように犯罪に走ることになります。「この期に及んでケシカラン」というお説教をなさる方もいらっしゃるかもしれませんし、「どんな理由があっても犯罪を正当化はできない」というご批判もあると思います。しかし、崖っぷちに立たされた者にとっては、そのような批判に構っている余裕などはありません。
社会保障制度の目的というものは、単なる「お情け」ではなく、個々人の生活を国家がある程度まで保障することによって、崖っぷちに立った人物が自己の生活のために他者の財産を奪わなくても良いようにするためでもあります。確かに、社会保障制度というものは、「因果応報」「単純勧善懲悪」の価値観とは相容れない部分もあるでしょう。しかし、社会は現実主義的に建設しなくてはなりません。「必要悪」という視点が無ければ社会は成り立ちません。