その一方で、もう一極、すなわち、雇用・貧困問題を社会構造として捉える人(自称含む)においても、同様に出てきているように思います。たとえば、以下。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090622-00000084-mai-pol
>>> <労働者派遣法>野党3党、改正案を提出へ報道を見ての私の第一感想としては「あーあ、もう知らない」でした。もちろん、先の年末年始、あんなものを見せ付けられれば、政治として、労働者の生活を保護するために何らかの対策を講じなければならないという問題意識を抱くのは当然です。しかしながら、「労働者の生活を保護すること」と「現在の雇用を守ること(=解雇させづらくすること)」は必ずしもイコールではありません。
6月22日20時32分配信 毎日新聞
民主党の菅直人代表代行と社民党の福島瑞穂党首は22日、国会内で会談し、労働者派遣法改正案の要綱を共同でまとめた。製造業への派遣を3年以内に原則禁止とし、専門的な業務だけを認める内容。国民新党を含めた野党3党で週内にも国会に提出する。政府案よりも派遣規制を強める改正案を提出し、衆院選での争点にする狙いだ。
要綱によると、3年以内に、専門的な知識、技術を必要とする業務を政令で定め、これらへの派遣は認める一方で製造業への派遣を禁止する。このほか▽派遣元企業に対するマージン率公開の義務付け▽派遣の期間制限に違反した派遣先企業に対し、労働者が「直接雇用」を通告できる−−なども盛り込んだ。
民主党は当初「2カ月以下の派遣禁止」を掲げていたが、「派遣切り」の社会問題化を踏まえ、今年1月から社民党と製造業への規制を巡る調整を始めた。社民党は製造業派遣の全面禁止を求めたが、民主党は「雇用の流動性が損なわれる」などとして協議は難航していた。
この日も派遣を認める専門的な業務を巡って社民党が厳格化を求めたが、結局は「野党がまとまらないと与党に審議入りすらも働きかけられない」と一致、合意に至った。【小山由宇】 <<<
しばしば不思議に思っているのですが、日本の雇用問題について「労働者側」の人・団体、すなわち、労働者が現在就いている雇用の「イス」を保護しよう」ために活動する人・団体、具体的に言えば共産党や社民党などは、北欧の社会保障政策に対する憧れみたいなのを持っていて、ことあるごとに「スウェーデンの手当ては〜」とか「デンマークの失業保険は〜」とかいう風に話を展開したがる一方で、なぜか、北欧諸国の雇用の流動性はかなり高い、すなわち、日本に比べれば労働者は遥かに解雇されやすい状況にあることは余り言いたがりません。北欧諸国が日本に比べれば少ない人口・GDPであるにもかかわらず、日本よりも手厚い処置を保障できているのは、当地では雇用の流動性が高いがゆえに、時代の要請に対して労働力を迅速に投入できるという点も決して見逃してはならない重要なポイントであるにもかかわらずです。
本当に「北欧に学ぶ」のならば、今回の改正案のようにではなく、派遣労働を(制限は当然必要であるにしても)労働形態としては維持しつつ、各種手当てで労働者の生活にとって不足する分を補ったり、あるいは契約更新を断られた場合などに備えて失業保険の準備を充実させるといった方策を採るように提案すべきです。というか、あちらさんはそうやって雇用の流動性と労働者の生活の保護をそれなりに両立させているわけなんですけど。
まあ、先の年末年始の雇用をめぐる論議は、「自己責任論vs社会構造原因論」という構図が固定化してしまっていたので、社会構造原因論者は総じて自己責任論者と戦う必要があり、そのために、社会構造原因論内部における細かい意見の相違について詳しく論じる機会がなかったという、ある意味仕方ない事情がありました。しかし、自己責任論者が雇用問題に飽きてからずいぶんたっている、すなわち、敵失からずいぶんたっているにもかかわらず、陣営内部でこの意見相違についての論議が大して進んでいなかったところを見ると、先日取り上げた自己責任論者についてのみならず、社会構造原因論者についても、「何も変わってないなあ」という印象を受けざるを得ません。