まず、酒井さんの裁判について。既に報じられているように、初公判において酒井さんは、今後について「介護の仕事がしたい」と発言しましたが、これに対して、たとえば「芸能界復帰への布石だ!」とか「心象を良くするための言い逃れだ!」といったような「批判的意見」が目立ちます。しかしながら、なんかどれもこれも、よく読むとイチャモンレベルの論理の飛躍が見られるように思えてなりません。たとえば、以下。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091028-00000010-ykf-ent
>>> のりピー介護資格「心証をよくするためのポーズ」厳しい声も最後から一つ前の段落の「芸能関係者」なる人物の発言。2文でできている発言ですが、1文目と2文目は、意味の上で断絶があり、直接には連続しないような気がするんですが、なぜかフォロー無しで同じ1セリフとしてまとめられています。もちろん、もしかしたら本当はちゃんとフォローされているのかもしれませんが、そうすると今度は2文をフォロー無しで直結させた夕刊フジ編集部の見識が問われますし、何よりも「裁判官への心証をよくするためのポーズとして資格取得を急ぐのなら」という文を付け加えようとするに至った根拠について何ら言及していない点についても、その見識を疑わざるを得ません。また、yahooニュースのこのほかの本件関連記事のコメ欄においても、類似の構造をもつコメントが多数寄せられており、やはり、この辺を何の疑問も感じずに直結させる人はかなり多いようです。まあコメ欄に対しては、その見識を問う気はありませんがw
10月28日16時56分配信 夕刊フジ
覚せい剤取締法違反(所持、使用)の罪で懲役1年6月を求刑された元女優、酒井法子被告(38)が、介護福祉士の国家資格の取得に向けて年内にも本格的に勉強を始めることが分かった。“アラフォー女子大生”として人生を再出発する可能性も浮上しているが、クスリの誘惑に負けた酒井被告が過酷な介護の仕事ができるのか疑問視する声もある。イバラの道が続きそうだ。
【イラスト】介護の勉強を勧められた酒井法子被告
現在、介護福祉士の国家資格を得るには、厚生労働省が指定した養成施設(4年制大学、短大、専門学校)を卒業するか、国家試験に合格するかしなければならない。
2011年度からは法改正で国家試験のみとなり、受験資格は、3年以上介護業務に従事しているか、福祉系高校卒業のいずれか。
26日の初公判に情状証人として出廷した前所属事務所「サンミュージック」の相澤正久副社長は一夜明け、酒井被告について「すでに介護の学校を絞り込んでおり、なるべく早く願書を出すつもりです」と明かした。
通学しなくても、通信教育などで勉強する方法もある。酒井被告の場合、長男(10)の面倒を見るほか、肺がん手術を受けた継母の看病も行わなくてはならないことから、相澤副社長は「在宅で介護の勉強ができ、期間限定で通える学校がいい」などと具体的なプランを挙げている。
だが、介護福祉士の国家試験は、法律で「禁固刑以上の刑に処され、執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者」は受験資格がないと定められている。
酒井被告は、実刑判決を受けないとの見方が強いものの、執行猶予が付いても、満了してから2年間は受験資格がないことになる。
そもそも、介護は、お年寄りや体の不自由な人の生活全般の世話をするハードな仕事。資格を取れば済む話ではない。
「芸能界で“お姫さま”扱いされ、裕福な家の不良息子と結婚して薬物におぼれてしまった酒井被告にできるのか。裁判官への心証をよくするためのポーズとして資格取得を急ぐのなら、とんでもない話だ」(芸能関係者)
そんな厳しい声も飛ぶ中、更生への道のりは平坦ではなさそうだ。 <<<
あるいは、以下の記事のように、無理矢理「芸能界復帰の布石」という「考察」を導こうとしている記事もあります。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091027-00000047-spn-ent
>>> 「介護勉強したい」は…のりピー芸能界復帰への布石第5段落。要するに「犯人は男性、あるいは女性」レベル、すなわちまだ何も分からない状況であるにもかかわらず、出自不明の情報を前面に押し出しています。
10月27日7時1分配信 スポニチアネックス
酒井法子被告(38)の芸能界復帰に向けた動きが始まっていることが26日、分かった。失跡時から酒井被告を支援してきた建設会社会長とサンミュージックの相澤正久副社長(60)が急接近。酒井被告の元担当マネジャーを再び世話役に戻している。
酒井被告の逮捕時からは決して良好な関係でなかった建設会社会長と相澤氏。それが初公判を前に頻繁に連絡を取り合っている。相澤氏も本紙の取材に「男気のある情け深い人」と関係が深まったことを認めている。
酒井被告の知人はこの動きを「芸能界復帰を視野に入れたもの」と指摘。酒井被告のために復帰の足固めだけはしてあげたい同会長は、自身にそのノウハウがないため、相澤氏に復帰へのシナリオの相談を始めている。
この橋渡し役を務めたのが、酒井被告を10年近くにわたって担当した元マネジャーの女性。肺がんで療養中の継母に代わって酒井被告の個人事務所「Nコーポレーション」を管理するなど、酒井被告からも絶大な信頼を寄せられている。酒井被告が解雇された時点で2人は無関係になったはずだが、現在では生活の面倒をみる“世話役”として復帰。入院先から退院した後、同居も始めた。
酒井被告はこの日の初公判で、今後について「介護の勉強をしたい」と明言。相澤氏に勧められたもので、継母が療養中で歩行も不自由なことから、その思いを持っているのは間違いない。だが「介護」によるイメージアップが復帰への青写真となるのも事実だ。
今回の事件でサンミュージックが肩代わりしたCMスポンサーなどへの損害賠償額は1億円超とも言われ、それを返済しなければならない。介護の仕事による収入だけでは、その返済も今の生活を続けることも不可能。いずれ芸能界復帰するためのシナリオを、芸能界育ての親と逮捕後の最大の協力者が手を携えてサポートすることで合意した。
くしくも今回の事件で人気の大きさを実証したことも、2人が芸能界復帰への道筋をつくる要因になった。 <<<
酒井さんの反省の一言一言を、論理的に無茶な展開をしようとも、悪いほうに悪いほうに考えようとしていると考えざるを得ない展開です。
それにしても、酒井さんの一件を見ていると、日本人の勧善懲悪趣味は想像以上に強烈だと言うことを改めて思い知らされます。覚せい剤をはじめとした薬物犯罪は、もちろん薬物濫用が社会に蔓延することを防ぐために何らかの措置を講じなくてはならず、場合によっては刑事事件として扱わなくてはならないにしても、所謂「被害者無き犯罪」であります。にもかかわらず、まるで誰かが理不尽に殺されたかのようなこの騒ぎ。「悪いものは悪い」の一点張りでここまで熱くなれるのは、ある意味たいしたものです。
押尾学氏の裁判について。こちらは、薬物乱用事件と同時に同室者死亡事故(事件?)が発生しており、もしかしたら「被害者のいる犯罪」になるかもしれません。
一般に昨今のメディア報道においては、「被害者のいる犯罪」においては、被害者感情・遺族感情に「寄り添う」報道が、本当に被告人が「加害者」なのか分からない段階からされています(まあ、以前にも書きましたが、その「寄り添う」の実態は「置き換え」にすぎず、よってしばしば、本物の被害者・遺族の求めていないことを「代弁」するという現象が起きるわけですが)。
にもかかわらず本件においては、所謂いつもの「被害者感情・遺族感情に『寄り添う』報道」とはちょっと毛並みが異なるように思います。やはりここは、死亡した女性の死因が、違法薬物の自己意志による摂取であった、すなわち、死亡女性もまた「悪いやつ」であり、「自業自得」であるとから、「寄り添う」ことに些かの躊躇いが生じるのでしょうか。
多忙ゆえ、深く報道を検証し世論を分析できないのですが、酒井・押尾両氏裁判についての所感を以上に記します。