当ブログは移転しました。詳細はこちらに掲載してありますので、ご参照ください。

2009年12月30日

共同体的過信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091228-00000075-jij-soci
>>> なくせ痴漢! 防犯カメラを設置=埼京線車両に、全国初−JR東日本
12月28日16時41分配信 時事通信

 JR東日本は28日、痴漢対策の一環として、埼京線(大宮―大崎)の一部車両で防犯カメラの運用を始めた。同社によると、新幹線などではデッキの設置例はあるが、車両内のカメラ設置は全国初の試みという。
 同社によると、画像は数日間保管され、上書き消去される。乗客のプライバシー保護のため、捜査当局から要請された場合のみ提出する。
 防犯カメラは、運行する32編成(1編成は10両)のうち1本の1号車に設置される。1月下旬以降、設置車両の本数を2倍にし、3月末には対象車両をさらに増やすかどうか結論を出すという。
 カメラは縦12センチ、横15センチのボックス型。2台1セットで、天井に近い中づり広告付近に置かれる。
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 コメ欄。
>>> 2009年12月28日 16時44分tom*****さん
私もそう思う128点 私はそう思わない8点

冤罪も減るのでいいと思います。
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>>> 2009年12月28日 16時46分hir*****さん
私もそう思う100点 私はそう思わない1点

このカメラで尻を触ってるかどうか
どうやって検証するんだろ。
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>>> 2009年12月28日 16時44分sil*****さん
私もそう思う97点 私はそう思わない3点

痴漢は男性側にとっても、一番晴らしづらい冤罪という側面がある。
犯人を見つけるだけではなく、疑われた人の無実を晴らす役目も期待したい。
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>>> 2009年12月28日 16時47分nar*****さん
私もそう思う93点 私はそう思わない16点

冤罪防止には、男性専用車両の導入を!

男性差別は良くない。
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>>> 2009年12月28日 16時48分ucl*****さん
私もそう思う80点 私はそう思わない2点

あんな混雑した車内で、どうやってカメラで手元を写すんだよ。
結局男はずっと手を挙げて乗車しろっていうのか?
<<<
 当然のことではありますが、「監視カメラで監視される」ということはすなわち「誰かに見られている」ということであります。しかし、何かといえばプライバシーだとか個人情報だとか言って情報を隠したがる人が多い昨今であるにもかかわらず、「監視カメラ」だけは、その本質は前述したとおり「誰かに見られている」である点においては全く同じであるにもかかわらず、時代の風潮とは逆に、何かともてはやされています。本記事コメ欄においても、その実効性についての疑問はあるものの、反対する言説は、少なくとも上位コメントにおいてはありません。

 「プライバシー保護」欲求の高い時代における「監視されたい」欲求。この(本来は)矛盾する2つの欲求が「矛盾無く」並立する要因とは何でしょうか。それは、結局「自分は悪いことなんてしない」という自信と、「情報管理者は悪いこと(目的外使用・時に「悪用」)なんてしない」という思い込みではないでしょうか。

 前者については、本件に限らず、刑事政策を如何にすべきかという議論において広く見られる現象です。確かに「悪いこと」をしない人にとっては見られてもやましいことは無いし、監視カメラを設置する場所というのはプライベート空間ではないので、どちらにせよ誰かに見られることは避けられないのだから、「今更カメラで撮られたところで何だ」というのが正直なところでしょう。そのごく自然な感覚は良く分かります。

 しかし、それが成り立つのは「『悪いこと』の定義は不変である」、「自分が『悪いこと』と定義される行為をするはずが無い(=公的・法定の善悪判断は『庶民感覚』と一致している)」という2つの前提が守られる場合のみであり、そして、その前提が常に守られるという保障は何処にもありません。それは、何かと「庶民感覚」がもてはやされ、ついに法廷にまでその「庶民感覚」を持ち込むことを是とするに至った昨今の日本社会を見れば一目瞭然、私が云々しなくても、自称「庶民」の皆様が以前より率先して繰り返し主張なさってきたとおりです。というか、公的・法定の善悪判断が「庶民感覚」と一致していれば、裁判員制度導入を含めた「司法改革」に対してここまで支持が集まることも無かったでしょう。やはり、「2つの前提」は常に成り立つとは限らず、その点において、このような自信は「自信過剰」であるとも言い得ます。

 にもかかわらず、このような自信が社会に一般的となっている。このことは、「情報管理者は悪いことなんてしない」と思い込んでいるという証左なのではないでしょうか。

 このような認識を得たところで、私たちは、後者、すなわち、「情報管理者は悪いことなんてしない」という思い込みについての検討に移りたいと思います。

 後者については、私は以前よりこの傾向を様々な場面で指摘してまいりました。たとえば、「改憲派論理研究」シリーズでは、中国やロシアの軍事力による戦争勃発という危険性に対する意識は極めて高い一方で、日本の軍事力が何かの拍子で暴走するという危険性に対する意識は驚くほど低いというもの、つまり、「自分が所属する社会集団の持つ「危険性」に対する意識の低さ」であります。

 この要因として、前掲シリーズの中で私は、「自己の所属する社会の体制、すなわち『民主主義』体制を『良識的市民を基礎とし、彼らがその主権を十分に行使できている運命共同体』くらいの位置づけで捉えているがために、自己の所属する社会を過剰に信用しているのではないか」と仮定しましたが、本件でもその仮定は生きるのではないでしょうか。

 しかし、たとえば以下を見る限りでも、そのような思い込みは成立するとは限らないと言わざるを得ません。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091217-00000067-mai-soci
>>> <阿久根市長>市民の課税資料提出させる 「拒否は処分」
12月17日14時44分配信 毎日新聞

 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(50)が、市内の民間所得状況を把握するためとして、市民の課税情報資料を税務課長に提出させていたことが分かった。市関係者によると、課長は当初「個人情報保護の観点から、目的外の利用は認められない」と拒んだが、市長が懲戒処分の意向を示し、その後に提出した。個人情報の目的外利用や、強引な指示のあり方をめぐって批判を招きそうだ。

 課税資料は市が収集し、市民の個人収入などが記載されている。税務課は個人情報を保護するため、データのうち氏名や住所など個人が特定される項目を伏せて、市長に提出したという。鹿児島県税務課は「課税額の確定のために収集、作成した税務資料を第三者に示せば、秘密の漏えいを禁じた地方税法に違反するおそれがある」としている。

 この資料をめぐっては、市長派の市議が15日、一般質問で「市民所得に比べ市職員給与が高額だ」と主張し、比較のためとして提示を要求。課長は「個人情報保護条例で、収集目的外の利用は原則認められていない」と、応じない意向を示した。だが、続いて答弁した市長は「以前から提出するよう言っているが、市長命令に従わないので処分します」と、公の場で懲戒の意向を示していた。

 市長は職員の処分を協議する「市賞罰審査委員会」の規程を改定。市幹部の4委員を全員解任し、委員会招集権も市長自らが持つようにし、民間からの委員登用に改めたばかり。給与総額を記した張り紙をはがした元係長を懲戒免職処分にした際にも、「(張り紙を掲示する)市長の『命令』に従わなかった」のを理由としていた。

 = ◇ =

 一方、鹿児島県議会は17日、ブログで差別的記述をした阿久根市の竹原市長に対し「人間の生命の尊さをあまりにも軽んじている」などとする非難決議を全会一致で可決する。首長の言動を巡って県議会が非難決議するのは極めて異例。

 決議は障害者や家族らの「心痛は計り知れない」と指摘。竹原市長が市議会答弁などで謝罪拒否したことを踏まえ「自らを正当化する姿勢に終始したことに強い憤りを覚える」と批判した。

 竹原市長は非難決議について先日の市議会で「県議会に興味はない」などと答弁した。この問題では、阿久根市議会も18日、市長に謝罪を求める決議を可決する。【馬場茂、福岡静哉】
<<<
 
 以上のように、「情報管理者が悪いことしない」という前提が常に守られるという保障は何処にもありません。

 ここ数年、相手の信頼に反する行為を行う人間や組織が官民を問わずしばしば報じられるようになり、社会問題となりました。そのためか、以前と比べれば日本人は多少は疑り深くなったようにも思うのですが、やはり根底における「他人過信」「共同体的過信」というのは、それほど変化していないのではないかとも思います。もう少し、いい意味で疑り深くなることも必要なのではないでしょうか。
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2009年12月27日

不幸自慢・貧乏競争

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091222-00000135-jij-soci
>>> キャバクラ労組を設立=女性従業員ら、職場環境の改善要求
12月22日17時33分配信 時事通信

 賃金未払いや職場環境の改善を求めて、キャバクラで働く女性ら約10人が22日、労働組合「キャバクラユニオン」を都内で設立し、厚生労働省で記者会見した。キャバクラの女性従業員でつくる労組は初めてという。
 労組メンバーらは、店側が「罰金」と称し、さまざまな名目で給料から不当な天引きをしていると指摘。売り上げの伸びない女性に嫌がらせをし、退店に追い込む悪質なケースがあるほか、男性従業員によるセクハラも多いと訴えた。
 代表者の20代の女性は「『楽して高給がもらえる』などと言われるが、天引きの結果、月収が10万円に満たない女性も少なくない。現実は違うことを知らせたい」としている。
 同労組は女性従業員を対象に、電話相談窓口を27日正午から午後10時まで開設する。電話番号は03(3373)0180。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091222-00000586-san-bus_all
>>> キャバ嬢の悩み赤裸々に 労組立ち上げの背景
12月22日20時32分配信 産経新聞

 未払い賃金、不当解雇、セクハラ…。元キャバクラ嬢らが22日に立ち上げた、全国初とみられるキャバクラ嬢の労組「キャバクラユニオン」。立ち上げに踏み切った元キャバクラ嬢らの話からは、華やかな世界の裏にある厳しい現実が赤裸々に浮かび上がった。

 代表の桜井凛さん=仮名=は、約6年前にキャバクラ勤務を始めた。新宿・歌舞伎町や六本木など東京都内の店で勤務した後、約1年前からは練馬区内の店に入店。しかし、未払い賃金やセクハラに苦しめられ、半年後に辞めた。フリーター全般労組に「未払い賃金を回収したい」と相談した際に、同じ悩みを抱える女性が多くいることを知り、ユニオンの立ち上げを決意したという。

 桜井さんは、「勤務していた店で胸や背中が大きく開いた露出の高いドレスを着させられた上、店長から胸や下半身を触るなどのセクハラを受けた」と明かす。今年3月には、病気で休んだことを理由に10万円以上の未払い賃金も発生しているという。今年5月に退店し、現在はアルバイトで生計を立てている。

 「それでも、お客さまに喜んでもらえるキャバクラ嬢という仕事に誇りを持っている」と桜井さん。今後はユニオンの代表として、若いキャバクラ嬢の相談相手になりたいという。

 同ユニオンの上部組織となるフリーター全波労組の共同代表、布施えり子さん(28)によると、最近はキャバクラ嬢から「指定した日に客を呼べなかっただけで罰金を取られた」「辞めることを伝えたのに、最後の1カ月の給料が支払われなかった」などといった賃金トラブルに関する相談が相次いでいるという。

 布施さんは「キャバクラ嬢も、それが当たり前だと思い込んでいる人が多い。泣き寝入りせず気軽に相談してほしい」と呼びかけている。
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 コメ欄。ただし、産経配信記事にはコメ欄がついていないので、時事通信配信記事のみ。
>>> 2009年12月22日 17時37分pbt*****さん
私もそう思う7,751点 私はそう思わない831点

組合作る前にまず税金はらえ!
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>>> 2009年12月22日 20時16分tom*****さん
私もそう思う2,962点 私はそう思わない561点

いつから日本は、水商売やってる最底辺の人間が堂々とこんなことをできる社会になってしまったのでしょう。まともな人間なら隠したがるものだと思うが。
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>>> 2009年12月22日 18時32分mt_*****さん
私もそう思う2,182点 私はそう思わない224点

夜の商売に労組はそぐわないな。
嫌なら辞めればいい。
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>>> 2009年12月22日 20時25分you*****さん
私もそう思う966点 私はそう思わない71点

どうせ毎日出社してるわけでもなく、週に数日、夜から数時間なんでしょ?
それで月収10万ぐらいなら十分高給じゃないですか
何を言ってるんでしょう
<<<
 一番最初のコメントは、人間の権利に関わる話題についてはいつも出てくる定番のコメントです。「一般論(?)は分かった。で、この人たちがそうであるというソースは?」というツッコミができる点においても、いつもどおりです。お元気そうで何よりです。

 2番目のコメントは、件の労働者が就業している業界に対して自己の感覚を根拠に(つまり無根拠に)云々するという点において、特定業界の業界内問題についての報道に典型的なコメントですね。
 本件はちょうど「水商売」ということで、「水商売」を「卑しい仕事」と見る嫌いがいまだに根強い日本社会においては、いつも以上に「業界」という要素が重視されがちで、そのため、「水商売の供給側を「最底辺の人間」とするなら、マーケットメカニズムに従えば、需要側もまた「最底辺の人間」になるだろう!」などと反論しそうになりますが、もちろんそういう反論も重要ですが、もっと大きく見るべきです。

 3番目。労働問題においては必ず出てくる定番のコメント。こういうコメントと現実の情勢を見比べるたびに、「雇用に流動性を!」と叫んでいる規制緩和派の方々の口車に危うく乗りそうになる私でございます。でも、以前にも書いたけど、私は派遣労働のような高流動的雇用は必ずしも悪いとは思っていません。

 以上、3つのコメントはどれもこれも「定番」といいうる、特定業種に就く労働者の権利をめぐる問題に典型的な言説ばかりでした。この点において、この問題をめぐる基本的な社会的関心は、少なくとも「自己責任」論が吹き荒れた昨冬から余り変化が無いと言えると思います。

 ところが4番目。要するに「不幸自慢」「貧乏競争」です。
 もちろん、この手の言説は、最終的に「下にあわさせる発想」などと称して批判してきた発想に繋がったように、以前から見られる言説であり、昨冬の「自己責任」論を根拠づける言説の一つとなっていたことは事実です。しかしながら、実際はそれほど主要な言説ではなかったように記憶しています。
 それから一年。昨秋以来の急激な景気悪化の影響は未だ回復しきっておらず、むしろ悪化してすらいます。昨冬に「アリとキリギリス」の話を偉そうに口にしていた人も、今や無駄口を叩いている暇ではなく、「自己責任」論は以前ほど高揚していません。しかし、その代わりなのでしょうか、むしろこういう「不幸自慢」「貧乏競争」という、以前は片隅で一応確認される程度であった言説が少しずつ大きくなってきているような所感です。

 まあ、あくまで所感ですけどね。確認するソースは、漁ればあるかもしれませんが、数〜数十GBの資料フォルダの中から探すのは大変なので、とりあえず忘れないうちに発想のメモだけしておきます。

 しかしそれにしても、設立しただけで嫌がられるって、労組って大変ですね。代表者は、産経記事にもあるように「それでも、お客さまに喜んでもらえるキャバクラ嬢という仕事に誇りを持っている」と言っている点、ひたすらに店側に不満を持っており、また、まだストなどを打っているわけではない点、更にキャバクラなんて使わない人にはまるで関係ない点において、たとえば国鉄の労組なんかとは比べ物にならないのにね。
 でもまあ、自分以外の叩けるものがあれば何でも叩きたいという(いじめっ子と何が違うのか良く分からない)衝動が今の時代を象徴するものだと仮定すれば、それは仕方ないのかも。でもだからって不幸自慢・貧乏競争をその根拠とするのは情けないなぁ。せめて、不満の矛先を政治のせいにすれば、だいぶ見栄えが良くなるのにね。
posted by s19171107 at 00:05| Comment(2) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月16日

てんのう

「1ヶ月ルール」以前に、75歳の病身の老人をいつまでも働かせているという点に対する問題意識は感じないのだろうか。
posted by s19171107 at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月07日

人物・団体評の「再全体化」について

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091203-00000024-yom-soci
>>> 阿久根市長、ブログで物議…障害者家族ら反発
12月3日6時13分配信 読売新聞

 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(50)が自身のブログ(日記形式のホームページ)に「高度医療が障害者を生き残らせている」などと、障害者の出生を否定するような独自の主張を展開している。

 障害者団体は反発、市議会でも追及の動きが出るなど波紋が広がっている。

 ブログは11月8日付。深刻化する医師不足への対応策として、勤務医の給料を引き上げるべきだとの議論に対し、「医者業界の金持ちが増えるだけのこと。医者を大量生産してしまえば問題は解決する。全(すべ)ての医者に最高度の技術を求める必要はない」と批判。

 そして、「高度な医療技術のおかげ」で機能障害を持ち、昔の医療環境であれば生存が難しい障害児を「生き残らせている」などと述べ、「『生まれる事は喜びで、死は忌むべき事』というのは間違いだ」と主張している。

 知的障害者の家族でつくる「全日本手をつなぐ育成会」(本部・東京、約30万人)の大久保常明・常務理事は「人類繁栄のため、優れた子孫だけを残そうとするかつての優生思想そのもの。命の重さを踏みにじり、公人の意見とは思えない」と批判。

 阿久根市身体障害者協会(約1050人)の桑原祐示会長も「差別意識も甚だしい」と反発、役員会で対応を協議し始めた。

 同市議会の木下孝行市議も市長に説明と謝罪を求め、14日から始まる市議会一般質問で追及する。

 竹原市長は取材に対し、「養護学校に勤めている人から聞いた情報をそのまま書いた。事実と思う。障害者を死なせろとかいう話ではない」と説明している。

最終更新:12月3日6時13分
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 阿久根市長の竹原氏がアレなこと言ったりやったりするのは「いつものこと」だし、こういうブログをやっていると優生思想論者の相手をすることも少なくないので、本件についても「ああ、またか」くらいにしか思っていませんでしたが、世の中的には大問題らしく、彼の言動にしては結構大きく取り上げられています。私としては、主張が「常識」とズレているのは以前より重々承知していますが、いよいよアンテナについても「常識」とズレていることを感じている次第です。

 それはさておき、最終段落。これは今回の本報道で初めて知った次第ですが、「養護学校に勤めている人から聞いた情報をそのまま書いた」そうで、「事実(だ)と思」っているそうです。ふーん。

 竹原市長や大阪の橋下知事のように文革的手法を好む人、あるいは、その熱心な支持者たちが、自説に都合の良い言説であればヨタであろうと構わず飛びついたり、あるいは、内容において不適切であろうと構わず思いつきを安易に口にしたりする傾向にあるように思います。竹原氏の場合は何よりも本件であるし、橋下氏、そして彼の熱心な支持者についていえば、光市事件懲戒請求騒動が代表例かと思われます。

 では、その原因は? こういう安易な発言というのは、このように人々の耳目を集めるので、ある種の売名になります。その点において、耳目を集めるパフォーマンスを展開したがる政治家の一般論的な事情としてよく言われる「政界における支持基盤が無いがゆえに大衆の熱狂しか頼ることができないが、その大衆というのは冷めやすく忘れっぽいので、常に注目を集め続けなければならず、よって耳目を集めるパフォーマンスを展開する」というのがまず最初に検討されるべき仮説ですが、しかし本件は、市長本人の主要政策分野(公務員叩き)とは異なる分野であるがために、これを支持拡大のためのパフォーマンスとして利用しているという可能性は低いように思われます。

 私としては、これはパフォーマンスではなく、彼の素ではないかと考えます。すなわち、世の中には、このように何でも安易に口に出す「口は災いの元」を地で行く困ったさんが一定数存在することは、これは残念ながら事実です。阿久根市の場合、そういう困ったさんが偶然選挙で当選してしまった。結局それだけなのではないかと。

 そう考えると、首長選出というのは実に恐ろしいとしか言えません。そういえば先の大阪府知事選挙も、相手が余りにアレすぎて、橋下のほうがもしかしてマシなんじゃねえかとすら思えるくらいでした。

 しかし、首長というのは必ず選ばなければならず、そしてそれは大抵一人です。以前より当ブログでは、人物あるいは団体の評価に際しては対象の色々な面を分割して評価しなれればならず、ある面のみを過剰に評価の対象とし、その特定の面のおける評価を以って全体の評価としてはならない、特定の一面を全体化してはならないということを繰り返し申し上げてきました。しかし、人物も団体も実在としては一つである以上、結局のところどこかでその評価を「全体化」しなければなりません。どの要素をどのように「全体化」すべきなのか。なかなか難しいところです。

 今までは、「世論」の動向、すなわち「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という風潮を相手してきた関係上、「対象の『面』を分割せよ」と言ってきましたが、そろそろ「分割した『面』をよく再全体化せよ」と言わなければならないかもしれません。しかしその「再全体化」も、やり方次第では「特定一面の全体化」になりかねませんからねえ。どういう風にすればいいのかな。
posted by s19171107 at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月05日

日ごろの発言って大切ですよね

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091204-00000536-san-soci
>>> 橋下知事激怒「本当に神戸市はダメだ」 市室長から抗議電話され
12月4日11時58分配信 産経新聞

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をめぐり、大阪府の橋下徹知事が神戸空港の活用の可能性についてふれたことに対し、神戸市の空港事業室長から知事あてに抗議電話があったことが4日、わかった。橋下知事は「市長からの抗議なら分かるが公務員が政治家に厳重抗議するのはおかしい」と怒りをあらわにした。

 府空港戦略室によると、抗議電話があったのは2日。「他の自治体が管理する空港について基地の移転先として例示した知事の発言はもってのほか、厳重に抗議する」という内容で、経緯が知事に報告された。

 普天間問題について橋下知事は、政府からの要請があれば、関西でも受け入れを議論すると発言。関空の軍民共用化や神戸空港の活用などについて言及していた。

 橋下知事はこの日、「神戸市役所は税金でつくった空港なのに、自分たちの空港と思っている。口を出すなというなら、関西3空港をめぐる問題でも、神戸空港を除いたらいい。神戸市は、もうちょっと関西全体のことを考えないと本当にダメ」と持論を展開した。
<<<
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091204-00000021-maip-soci
>>> 橋下知事 普天間問題で抗議される 「神戸移設を検討」
12月4日13時33分配信 毎日新聞

 沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題で、関西国際空港や神戸市営の神戸空港での一部受け入れを検討課題に挙げた大阪府の橋下徹知事は4日、報道陣に対し、同市から抗議が寄せられたことを明らかにした。その上で「口を出すなと言うなら(経営一体化などの関西3空港論議から)神戸を除いたらいい」と反発した。

 府によると2日、同市の空港事業室長から電話で「他の自治体が管理運営する空港について、移設先と例示するのはもってのほかだ」と府空港戦略室に強い抗議があったという。同室の担当者が知事に報告した。

 橋下知事は「(矢田立郎)市長の抗議なら分かるが、担当者から寄せられた。市長は許したのか。(一般の)公務員から言われたくない」と批判。「自分たちの空港だから口を出すなというのは勘違いだ。運営には国税も入っている。発言するのは当たり前の話だ」と持論を展開した。

 矢田市長はすでに「(基地)機能の引き受けは考えられない」と否定している。【稲垣淳】
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 たしか橋下理論では、国防の問題について地方が意見してはいけない(「異議を挟んではいけない」)という結論に達したような気がするんですが、彼の前後の発言が矛盾するのはいつものことですから不問とした上で、橋下氏の言い分について検討したいと思います。毎日新聞配信記事第3段落がわかりやすいと思いますので、当該部分から要点を抽出すると、以下のようになると思います。すなわち、「自分たちの空港だから口を出すなというのは勘違いだ」(産経配信記事においては、前述に加えて「もうちょっと関西全体のことを考えないと本当にダメ」という発言も加わっています)と「(一般の)公務員から言われたくない」(同じく産経配信記事では「公務員が政治家に厳重抗議するのはおかしい」)です。

 前者については、典型的な縄張り争いで余り関わりたくないのですが、神戸市側の「地元を差し置いて勝手に代替地として提案しないでくれ」という言説は当然である一方で、橋下氏側の「その費用は誰が出した」というのもまた一理ある言説なので、正直どっちにも与しがたいところであります。しかし、「費用の出元」をいいことに(橋下主義の特徴ですよね、「優位」を以ってしての自己全面正当化は。)現地住民を差し置いて頭越しに云々するのは、やはりどんなもんかと疑問に思わざるを得ず、その点においては今回は、些か、橋下氏に不利ではないのかと思ったりもします。

 また、地元を差し置いての頭越し発言を正当化する文脈における「神戸市は、もうちょっと関西全体のことを考えないと本当にダメ」というセリフは、これだけで断定してはいけないので、今後の彼の言動を注視し、その思考回路を解明しなければならないものの、あるいは、「全体のこと」のためには地元・当事者の同意は必要なく推し進めても構わないという発想に基づくものかもしれません。とすれば、これは看過することのできない発言とも言い得ます。十分にありえるのが何ともまあ。。。

 後者について。「組織と組織の問題に関しては、その内容に関わらず、組織の代表を通してすべきだ」という、形式の問題として言っているのなら、それは一理ないこともない言説です。私としては余り意味の無いこだわりだと思いますが、それは良いとして、しかし、「公務員が政治家に厳重抗議するのはおかしい」という産経配信記事の文章表現だと、かつての発言から抽出できる彼の「官公庁組織論」を思い返せば、何か違う感じを受けてしまいます。もちろん、改心したかもしれない(まずしていないだろうけど)ので断定はしませんけどね。

 ほんとね、日ごろの発言って大切ですよね。そして、日ごろの発言を何処まで目の前の現象に当てはめて良いのかというのも難しいですよね。本件に限らず、たとえば刑事裁判でも、日ごろから空き巣を繰り返していたからといって、ある日の特定事件まで関与しているとは限らないとか。

 最後に参考として、ことの発端についての報道をおいておきます。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091130k0000e040020000c.html
>>> 普天間移設:「話あれば関空に」橋下大阪府知事

関西国際空港=2009年7月、本社ヘリから三村政司撮影 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、大阪府の橋下徹知事は30日朝、記者団に、関西国際空港への移設について「政府から正式に話があれば、基本的に(議論を)受け入れる方向で検討していきたい」と述べた。「あくまで個人的な意見」とし、政府からの要請は「正式にはない」としながらも、嘉手納基地の騒音軽減対策としての訓練の一部受け入れも視野に、関空の軍民共用化や神戸空港の活用も検討事項に挙げた。

 普天間問題が大詰めを迎える中、関空移設を前向きに検討する姿勢を示した橋下発言は波紋を広げそうだ。

 橋下知事は沖縄での地上戦を挙げ、「沖縄には多大なご負担をかけたので、本州の人間は十分配慮しないといけない」と述べ、「あくまで日米安保が軸の話だが、国から提案があれば、最初から一切拒否するわけにはいかない」との考えを示した。
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>「あくまで日米安保が軸の話だが、国から提案があれば、最初から一切拒否するわけにはいかない
 先にも書きましたが、最初から一切拒否も何も、国防問題について地方ごときが異議を挟んじゃいけないのが橋下地方自治理論でしょうよ。
posted by s19171107 at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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