>>> 梅田ひき逃げ、殺人容疑22歳男逮捕 「無免許、飲酒」http://www.asahi.com/national/update/1107/OSK200811060115.html
2008年11月5日13時24分
大阪・梅田で10月21日未明、交差点を横断中の会社員、鈴木源太郎さん(30)=堺市東区=が車に約3キロ引きずられて死亡したひき逃げ事件で、大阪府警は5日、事件直後から行方不明になっていたホストの吉田圭吾容疑者(22)の身柄を大阪・ミナミで確保し、殺人と自動車運転過失傷害、道路交通法違反(無免許運転)の容疑で逮捕したと発表した。「無免許運転で酒を飲んでいたので、怖くなって逃げた」と供述しているという。
府警は、ひいた時点では致命傷を負わせておらず、3キロ引きずったことで死亡させたとみている。このため、ひいた行為は自動車運転過失傷害容疑にあたり、死亡するまで引きずったことが殺人容疑にあたると判断した。
交通捜査課の曽根崎署捜査本部によると、吉田容疑者は事故時の状況について「交差点で信号待ちしたあと、目の前に人が見えて『ドン』という音がして人とぶつかったことに気づいた」と説明。車底部に巻き込んだまま逃走したことについて「タイヤで人を踏んだ感触があり、車が乗り上げてしまうのがわかった。人を引きずったまま走れば死んでしまうことはわかっていたが、とにかくその場から逃げ去りたかった」と供述しており、捜査本部は「死んでも構わない」とする未必の殺意があったとみている。
吉田容疑者は勤務していた大阪市此花区の建築会社所有のトヨタ「イプサム」で事件を起こしたとみられ、事件当日の10月21日から失跡。11月1日に捜査員が同区の駐車場で事故の痕跡があるイプサムを見つけ、吉田容疑者の行方を追っていた。その後「ミナミでホストをしている」との情報提供を受け、発生から15日後の5日未明、大阪・心斎橋のラーメン店にいた吉田容疑者の身柄を捜査員が確保した。事情を聴いたところ、ひき逃げを認めたという。
吉田容疑者は10月21日午前4時19分ごろ、大阪市北区梅田1丁目の国道176号交差点で無免許で勤務先の建築会社所有のトヨタ「イプサム」で鈴木さんをひいたうえ、車底部に巻き込み、約3キロ西の同市福島区吉野4丁目まで引きずるなどして殺害した疑いが持たれている。
◇
■梅田・ひき逃げ事件のこれまでの経緯■
10月21日午前4時19分 大阪・梅田の交差点で鈴木源太郎さんがひき逃げされる。車は引きずったまま逃走
同22分 現場にいた同僚が曽根崎署大阪駅前交番に通報
同26分 大阪市福島区で遺体を発見
同29分 大阪市此花区の防犯カメラに不審な黒いワゴン
同日 吉田圭吾容疑者が勤務先、自宅から行方不明に
11月1日 大阪市此花区で事故の痕跡がある黒いトヨタ「イプサム」が見つかる
同月5日午前3時55分 大阪・心斎橋のラーメン店で大阪府警が吉田容疑者の身柄を確保。当初は否認
同日午前9時 吉田容疑者を殺人容疑などで逮捕。「無免許と飲酒運転で怖くて逃げた」 <<<
>>> 容疑者「執行猶予中だったので逃げた」 梅田・ひき逃げ私は本件について以下2点に注目しました。
2008年11月7日3時3分
大阪・梅田で会社員の鈴木源太郎さん(30)が車に約3キロ引きずられ死亡したひき逃げ事件で、殺人などの容疑で逮捕されたホストの吉田圭吾容疑者(22)が昨年1月、詐欺罪で有罪判決を受け、事件時は執行猶予期間中だったことが大阪府警への取材などでわかった。府警は、吉田容疑者から「執行猶予中だったので逃げた」との供述を得たとしており、執行猶予の取り消しを恐れたことが強い動機になったとみて調べている。
交通捜査課の曽根崎署捜査本部などによると、吉田容疑者は19歳当時の05年8月、熊本県荒尾市の県道で、仲間とともに車2台でわざと追突事故を起こして入院や通院をし、保険金や給与補償金など計約630万円をだまし取った疑いがあるとして、同県警に06年10月に詐欺容疑で逮捕された。
吉田容疑者は追突された車の同乗者役の1人とされ、07年1月に熊本地裁で懲役2年執行猶予3年の有罪判決を受け、刑が確定していた。府警の調べに対して、「この事件で60万円を受け取った」と説明しているという。
吉田容疑者は逮捕当時、出身地の熊本県を離れ、大阪市此花区の建築会社で働いていた。有罪判決を受けたころ大阪に戻り、同じ会社で再び働き始めたという。
府警によると、ひき逃げについて吉田容疑者は「無免許で酒を飲んでいたので怖くなった」「何が何でも逃げなければならないと思った」とも供述しており、強い逃走の意思があったとみられる。 <<<
1.執行猶予中+無免許+飲酒運転での人身事故(←ここまで重なるとはねえ、、、)
2.衝突の衝撃は被害者にとって致命傷ではなく、引き摺られたことが致命傷となった
項目1は「世論」の怒りに対して更に油を注ぐ要素となっているようですが、私としては、項目2との関連から見て、項目1は極めて冷静な視点を持たなくてはならない本件における重要要素であると思います。
本件において、衝突の衝撃は致命傷となっていなかったと思われる被害者は何故、死亡したのでしょうか。それは引き摺られたことによります。では何故、引き摺られたのか。それは被疑者(以下、便宜的に「加害者」と書くが、推定無罪の原則を忘れてしまったわけではない)が被害者に衝突した後、逃亡を図ったからです。では何故、加害者は逃亡を図ったのか。それは執行猶予中+無免許+飲酒運転の事故であり、検挙を恐れたからです。
「悪質な犯罪には重罰を」という単純な論理にしたがえば、本件のような執行猶予中+無免許+飲酒運転のさなかでの人身事故という極めて悪質な事件に対しては相当な重罰が待っています。しかし本件は、逆にそのことが衝突時にはまだ致命傷を負っていなかった被害者を結果的に死に至らしめてしまった。もちろん、加害者が一番悪いのは言うまでもありません(←ここ勘違いして変なイチャモンつけないでくださいね、お願いしますよ)。しかし実際の人間心理としては、本件のような状況に陥れば、怖くなってとにかく逃げたくなる。そして本件のように逃げてしまい、被害者はすぐに病院に運べば一命をとりとめられたであろうのに死んでしまう。本件以外にも、たとえば佐賀男児ひき逃げ放置事件では、被害者の小学生との衝突後、加害者は被害者を車に乗せ山林に向かい、林道の中に放置したという、これもまた凄いことがありました。まあ、佐賀の件は発見が早く、被害者は元気に回復したので、加害者も殺人未遂で済みましたけど。
1月13日づけ「刑法:安易な厳罰化について」においても書きましたが、自動車人身事故において最も大切なのは被害者の生命を守ることです。加害者に対する処罰なんて被害者の生命を守ることに比べればどうでもいいことです。その点、私としましては、たとえ、加害者がどういう立場にあったとしても、逃げないで救急車を呼ぶなどの被害者救護活動をすれば、極端な話、罰は科さなくてもいいくらいなんじゃないかと思うくらいです。もちろん、現実的には少なくとも被害者の医療費くらいは出してもらわんと困りますが。
当ブログではしばしば、どちらかというと加害者の側に立つ記事編集をしてまいりました。単純な勧善懲悪主義に取り憑かれた感情屋の皆様におかれましては、間違いなく私は「犯罪者の味方」と映ることでしょう。しかし、以前から繰り返し申し上げてきていますし、今回の記事を冷静にお読みいただければお分かりいただけると思いますが、単純な勧善懲悪主義というのは、しばしば被害者のためにならないことがあり、場合によっては加害者に対する処罰を、単純な勧善懲悪主義に反して軽くすることが被害者の利益にもなるということがありうるのではないでしょうか。
関連記事一覧
http://www.geocities.jp/s19171107/DIARY/BLOGINDEX/saiban.html