>>> <経済財政白書>正社員と非正規雇用者の格差拡大認める1か月くらい前に労働白書が「非正社員の正社員化」を示しましたが、今回の経財白書を見る限り、正社員も正社員で決して安泰ではなく、非正社員を正社員にしたところで本質的な解決策には至らないことが(改めて)分かります。
7月24日10時57分配信 毎日新聞
林芳正経済財政担当相は24日の閣議に09年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。白書は昨秋以降の世界経済の急減速と、非正規雇用を中心に失業者が増加した状況などを分析。非正規雇用者が全体の3分の1まで増加し、正社員との生涯所得の差が約2.5倍となるなど「格差が拡大している」と認めた。さらに、企業が余剰人員として抱えている「潜在的失業者」が最大607万人に達し、80年以降で最悪になっていると推計。生産が回復しなければ雇用調整がさらに進みかねないとした。
日本経済の状況について白書は、07年11月から緩やかな後退局面入りし、08年9月のリーマン・ショック以降、輸出や生産が落ち込み、景気は過去に例のない「速さ」で悪化したと説明。景気後退の「深さ」も歴史的だったとの見方を示した。
また、公共事業の前倒しや家電製品のエコポイント制度などの政策効果で、足元は「持ち直しの動きがみられる」としたものの、(1)雇用情勢の悪化(2)デフレ懸念(3)海外経済の下振れ−−の三つのリスクが残っているとの認識も示した。
雇用面では、非正規雇用者の失業リスクが依然高く、格差が一段と拡大する懸念があるとして、社会保障など安全網拡充の必要性を強調。同時に、景気回復こそが「最大の格差対策」と訴え、輸出に頼るだけでなく、個人消費など国内需要にも軸足を置いた回復を目指すべきだとしている。
税や社会保障による所得の再分配機能については、日本は他の先進国よりも低い水準にあるとした上で、「高齢者層にしか働いておらず、現役世代にはほとんど再分配されていない」と指摘。所得税の減税効果が及ばない低所得者に現金を給付する「給付付き税額控除」の導入などにより、現役世代の格差縮小を図るべきだと提言した。【上田宏明】 <<<
今回はコメント欄ではなく、日本共産党の反応について。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-07-25/2009072501_04_1.html
>>> 2009年7月25日(土)「しんぶん赤旗」http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2009-07-25/2009072502_01_1.html
経済財政白書
雇用607万人「過剰」
大企業の削減姿勢を不問
企業の「過剰雇用」は600万人に拡大し、企業は雇用の大幅削減に重点を移す―。林芳正経済財政担当相が24日の閣議に提出した2009年度の年次経済財政報告(「経済財政白書」)は、雇用環境が一段と悪化する懸念があると分析しました。
白書によると、企業の生産水準から見た「過剰雇用」が1〜3月期に全産業で最大607万人、うち製造業で最大369万人に拡大したと推計。「生産の迅速な回復がない場合、(企業の対応は)労働時間削減から雇用者数の大幅削減へ重点が移る」としています。
格差問題をめぐり、非正規社員の比率が全労働者の3分の1にまで上昇したことなどを背景に「拡大傾向は続いている」と分析。労働所得の格差拡大は、雇用の非正規化がその主因だとしています。特に、02年から07年にかけて、製造業などで正社員を削減し、派遣社員を増加させる動きが目立ったと指摘しています。
白書の分析からも、大企業に雇用を守る社会的責任を果たさせ、非正規社員を正社員にすることが緊急の課題であることが改めて分かります。
ところが、白書は「雇用保護規制が厳しいと、非正規労働への依存が高まり、平均失業期間が長期化する」「景気回復こそが最大の格差対策」などと結論付け。雇用を守る体力はあるのに、人減らし・リストラに走る大企業の身勝手な言い分にそった形で、規制強化に反対する姿勢を示しています。 <<<
>>> 2009年7月25日(土)「しんぶん赤旗」確かに、この問題を解決するためには究極的には日本共産党の言うように、「ルールある経済社会」をつくることが必要な点に関しては異論はありません。しかしながら、企業が「はいそうですか」といってホイホイと協力するわけないことは考えるまでもなく分かることです。つまり、「ルールある経済社会」をつくるには相当な時間がかかるということです。
主張
最低賃金
貧困打開に大幅引き上げを
全国の最低賃金決定の目安を決める、中央最低賃金審議会の検討が大詰めを迎えています。
まじめに働いても生活できない「ワーキングプア」(働く貧困層)をなくすために、最低賃金の大幅な引き上げが求められている一方、財界などは不況を口実に、引き上げを見送る策動を強めています。労働者に対する最低生活の保障さえ考慮に入れないものであり、賃金の抑制は家計の消費を冷え込ませ、不況をいっそう深刻にします。不況のときこそ、最低賃金の引き上げが不可欠です。
生活権の保障のため
最低賃金とは、国が最低賃金法にもとづき賃金の最低額を決めるもので、企業はそれ以下の賃金では労働者を働かせてはならないことになっています。全国平均の目安にもとづき、都道府県ごとの地域最賃や産業別最賃が決められます。昨年7月に施行された改正最低賃金法は、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、少なくとも生活保護水準は下回ってはならないことを定めています。
昨年はこの基準にもとづいて、最低賃金は全国平均で16円引き上げられ、時給703円となりました。もちろん、引き上げられたといっても703円では1日8時間、月22日間働いても月給は12万3728円、年収は148万4736円にしかなりません。年収200万円以下の「ワーキングプア」の水準です。最低賃金を、全国一律で時給1000円以上にというのは、生きていくうえで、切実で当然の要求です。
しかも厚生労働省によれば、都道府県ごとの地域最賃は、東京や神奈川など少なくとも12都道府県で、それぞれの地域の生活保護基準を下回っています。生活保護基準との整合性を定めた改正最賃法にさえ違反しているのは明らかで、最低賃金の大幅引き上げは、この面でも待ったなしの課題です。
財界や一部の経営者がいうように、不況だから最低賃金を抑えるというのは、労働者の生活権保障をうたった最低賃金の趣旨に照らして、とんでもない暴論です。時給703円という低賃金や生活保護基準さえ下回るという水準が、「健康で文化的な最低限度の生活」に値しないことは明白です。
財界・大企業は、不況の中でもためこんだ内部留保は確保し、株主への配当は続けています。それにもかかわらず、労働者を切り捨て、賃金も抑え込もうというのは、犠牲はすべて労働者や下請けに押し付け、自分たちだけは生き残ろうという身勝手なものです。
昨年来の不況は、一部の大企業などでは「底を打った」などといわれていますが、雇用の悪化は歯止めがかからず、個人消費はなお低迷しています。最低賃金を引き上げ、労働者のふところを温めることこそ、内需を拡大し、景気を回復軌道にのせていくために欠かすことができません。
ルールある経済社会
最低賃金は世界各国で実施されていますが、欧米では相次いで引き上げられており、日本は最低水準です。最低賃金の引き上げは、日本に、人間らしい労働のルールをつくっていく上でも重要です。
最低賃金の引き上げを実現し、いまこそ労働者の生活と権利をまもる、「ルールある経済社会」を築いていくことが求められます。 <<<
しかし、当たり前のことですが、失業と生活苦の問題は今この瞬間にも起きている問題であり、そして刻一刻、深刻化している問題です。一刻の猶予も許されない問題です。にもかかわらず、おそらく日本の中でも数少ない「労働者の視点」に立っている(自称含む)団体である日本共産党までもが、悠長に「ルールある経済社会を!」なんて言っているというのが今現在の情勢です。
経済政策を語る人たちの特徴、それも嫌な特徴として私は、彼らがしばしば「ooがxxになれば、そのうち均衡が達成されて問題は解決する」という悠長な言葉を使うところにあると思います。そりゃまあ確かに「そのうち」どうにかなるでしょう。しかし、「そのうち」はいつ来るのか。「そのうち」が来るまでの生活はどうすればよいのか(ケインズも似たようなことを言っていたような記憶がありますねえ)。
もちろん、今回の日本共産党の「ルールある経済社会を!」という主張は、「そのうち均衡が達成する」という言説とは違いますが、悠長なことを言っているという点では同じです。私としましては、悠長なことを言って大した対策を考えようとしない「経済通」に対する批判として、ぜひ「そのうち」が実現するまでの対策を提案してほしかったところなんですが、ちょっと残念です。
ところで何で日本共産党までもがこんな悠長なことを言っているんでしょうか。私としましては、あくまで一つの可能性に過ぎませんが、「現実」の「惨状」を解決するための「理想」を高く掲げすぎるがゆえなのではないかと考えます。
もちろん、私は「理想」を掲げること否定するものではありません。しかし、余りに「理想」を高く掲げすぎ、そして「現実」が余りに悲惨すぎ、更に「理想」と「現実」のギャップが大きいと、何かあれば「そらみたことか、自分たちの理想が実現されればすぐにこんな問題は解決するんだ!ああすばらしいかな我が理想!」という思考にいたり、理想に対する執着を強めることになります。そうすると、「理想」の理想性・万能性が膨張するとともに、「理想」以外の「繋ぎの対策」に対する魅力が失われ、次第に「理想」以外の対策が思いつかなくなるのではないかと考えます。
幸いなことに、日本共産党の掲げる「理想」というのは、比較的現実的な「理想」なので、「現実」とのギャップもそれほど大きくありませんが、これが現実離れした「理想」であった場合、理想家の「理想」に対する愛着は異常なレベルに達します。そしてこの異常な愛着は、「理想」実現のための強引な手段行使に対する心理的抑止を低下させることでしょう。その結果は、1975年4月から1979年1月までのカンボジア史を見れば明らかでしょう。
こうやって考えると、日本共産党の今回の反応は「残念」で済まして良い反応ではないかもしれません。
労働者を冷遇する日本企業は、もう日本国内の消費には期待してないってことですかね?
みんながみんな「他社が従業員にたくさん給料を出して、その給料で自社製品をたくさん買ってくれるとオイシイなあ」と思っているんじゃないでしょうか。典型的なタダ乗り思考ですけど。