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2009年11月03日

進歩していない

 ちょっと前の話になりますが、去る10月21日から宇都宮地裁で、足利事件の再審が始まりました。足利事件は、無実の人間が18年近くにわたって「拉致監禁」された件であるため、警察・検察・裁判所に対する激しい批判がメディア報道あるいは世論において巻き起こり、捜査手法や裁判の実際についてさまざまな意見が交わされました。

 たしかに、捜査手法や裁判の実際について反省すべきところは多くあり、その点、メディア報道や世論の視点は間違ってはいません。しかし、メディアもメディアで菅家氏を犯人視する報道(特に読売新聞がひどかった)をしていましたし、世論だって、たとえば「そんな人だとは思わなかった」というような「近所の住民の声」が紙面に掲載されたように、菅家氏を犯人であると決め付けていました。にもかかわらず、メディアも世論も、自己の過去については殆ど省みることはありません。そして、同じようなこと、いや、それよりも低質な報道が繰り返されています。たとえば、以下。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091101-00000034-sph-soci
>>> 婚活詐欺女、中学時代から援交か 地元住民の話で浮上
11月1日8時1分配信 スポーツ報知

 埼玉県警に詐欺容疑などで逮捕された後、知人男性の相次ぐ不審死が発覚している女(34)について、中学校時代の“援交疑惑”が判明した。出身地の北海道別海町の住民の話で浮上したもので、成人男性との交際で多額の収入を得ていたとみられ、中学生ながら財布には1万円札の束が入っていたこともあったという。

 独身男性に結婚をちらつかせて金を詐取していたとされる女だが、その兆しは中学時代にあったようだ。

 地元住民の話を総合すると、別海町内の中学校に通っていた女は、成人男性と交際をする見返りに金銭を受け取る、いわゆる“援助交際”を行っていた疑惑が浮上した。性行為があったかどうかは不明だが、複数の男性から報酬を受け取っていたようで、1万円札の束が入った財布をクラスメートに見せたこともあったという。

 事実を知った中学校側は、何度も繰り返し援交をやめるよう注意。しかし、女は聞き入れることはなかったようだ。住民の中には「小学校高学年から大人の男性と一緒に歩いていた」と話す人もいる。

 中学生で大人の男性と交際していた女だが、性格は他人との交流に積極的だったわけではなかった。「あいさつはちゃんとするんだけど、いつも目と目は合わさない子だった」(住民)。外見にもあまり気は使わず、髪の毛はフケでいっぱいだったという。

 援助交際は、1990年代中盤に携帯電話や出会い系サイトで爆発的に広まったが、女の場合はインターネットも携帯電話も一般化していない80年代後半の話。「援交」という言葉すらなかった。

 また、複数の住民の証言によると、5年ほど前に羅臼町のガケから車で転落して自殺したとされる父親は、死亡する5〜6年前から母親と別居していたという。あまり近所付き合いを好むタイプではなかったようで、朝から独りでパイプをくわえている姿が、何度も目撃されている。

 一般企業にも籍を置いていたが、町議会議長を3期務めた祖父の司法書士事務所で仕事を手伝っていた。後継者となることを目指し、何度も司法書士資格の試験に挑戦したが、なかなか合格しなかったという。ある住民は「試験のことがプレッシャーになって自殺したんじゃないかと言われている」と話した。
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 「という」あるいは「ようだ」が多用された、伝聞のみを以って印象・イメージを作り上げる記事。足利事件のときも印象やイメージでモノを語る記事がありましたが、あれは一応「DNA鑑定」という、それなりに信頼性のあるインパクトの裏打ちがありました。しかし今回はどうか。結婚詐欺と援助交際は、性とカネの絡む問題という点では共通するものの、そのほかの点において余り関連性が見られるとは言いがたいと言わざるを得ません。にもかかわらず直結させる本記事。裏打ちも何も無い印象・イメージ作りでしかありません。

 そして、そんなのを真に受け、「疑惑」のひとつとして取り上げるコメ欄。ネット世論と現実世論のズレの補正が必要ですが、二者はそれほどズレてもいないと思います。
>>> 2009年11月1日 8時10分sho*****さん

私もそう思う10,282点 私はそう思わない247点

これだけ疑惑がありゃあ十分実名報道出来るだろ。
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 「印象やイメージで物事を判断するな」とは、求めたところでいきなり達成できるわけないので、もう言いません。そこまで求めるのは酷です。しかしそのかわりに、もうちょいマトモなソースで印象・イメージを作ってくれませんか。妄想を元に妄想を繰り広げられちゃかないません。せめて、現実を元に妄想してください。
posted by s19171107 at 22:04| Comment(3) | TrackBack(1) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お久し振りです。

この事件の報道に関しては、現時点では実名報道がされていないだけ、少しはマシなのかな…と暢気に受け止めていたのですが(ネット上では簡単に実名は分かっちゃいますけどね。こうした、現実の世間との建前とネット上との実情の乖離は10年以上前から既に始まっていたと思います)。

そう思っていたところへ、こんな記事が有りました。

34歳婚活詐欺女 顔と実名を出さない理由を聞いた
http://news.ameba.jp/domestic/2009/11/49160.html
>通常、容疑者であれば顔出し&実名報道をするものだが
本来は、「容疑者」の段階ではしないほうが正しいような…。
Posted by amanoiwato at 2009年11月05日 00:10
ご無沙汰しています。
思うところがあって、それまでのmashからはてな界隈で使ってる名前にしました。

この報道がなぜにここまでエスカレートしたのかといえば、被疑者の詐欺の対象になった人(そもそも詐欺自体はっきり立件出来てるわけではないんですが)が不審な死を遂げている点でしょうね。それが、余計に世論の「疑惑」をかきたてているというのか。
しかしまだ殺人はおろか、詐欺さえ立証出来ていない段階で、被疑者にバイアスがかかったイメージが植え付けられたことはあまりに大きいわけで、もしこの件で、被疑者が逮捕されて「裁判員裁判」にかけられて、かつ裁判員たちが「殺人の疑いがあったから死刑」なんて判決だしたらいったいマスコミの皆さんはどう責任をとるんでしょうかね?
Posted by mash_plus at 2009年11月06日 21:23
コメントありがとうこざいます。

>amanoiwatoさん
>本来は、「容疑者」の段階ではしないほうが正しいような…。
確かにそうとも言えるのですが、少年事件、たとえば93(2004)年6月に佐世保でカッターナイフで同級生を殺した事件では、複数の女児の写真が「犯人」としてアップされていたので、単に実名報道を取りやめるだけでは、別の問題が発生することもありえるのではないかと言う点において、この問題は難しいものがあると思います。

>mash_plusさん
「マスコミの報道責任」という観点はとても大切ですが、一方で「視聴者の受容責任」と言いますか、そういうものも絡んでくるので、恐らく想定の事態が起き、かつ、「マスコミの報道責任」がしつこく追及された場合は、マスコミとしては「信じたほうが悪い」で逃げるのではないかと思います。いつだったか、『オーラの泉』だったと思いますが、番組内容を真に受けて「オレは生まれ変わる!」とか言って自殺した中学生の問題に際して、製作局は「いやー。あれ信じる人がいるとは思わなかったっすよ」(要旨)で逃げましたからね。
Posted by s19171107☆管理人 at 2010年01月24日 00:13
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犯罪報道と実名
Excerpt: 「婚活」連続不審死の34歳女 ネット詐欺常習者だった! - livedoor ニュース via kwout この事件は、最近、マスコミでさかんに報道されていますが、被疑者の女性は殺人で逮捕されていない..
Weblog: PiichanのBlog
Tracked: 2009-11-07 17:19
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