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2007年09月08日

光市事件:真に法廷を死刑制度闘争に利用しているのはどちらなのか

 6日の山口光市母子殺害事件:3つの批判を検討するにおいても触れましたが、この事件の弁護団に対する批判として、法廷を死刑廃止運動の舞台としているという批判があります。それに関しては6日の記事で一応は否定しましたが、今度は「では真に法廷を利用しているのは誰なのか」について邪推してみたいと思います。

 その前に、検索エンジンなどから直接いらして、まだ6日の検討記事を読んでいない方のために「弁護団が法廷を死刑廃止運動に利用しているとはいえない」という部分からもう一回話を始めます。

 まず、『情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)』さんところの、弁護団発作成のQ&Aを転載した『光事件Q&A〜弁護団への疑問に答える〜光事件弁護団 』(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/0d076757138bc3e15ad60a04b184e8e4)という記事より弁護団公式声明を引用。
Q 死刑廃止の運動のためにしているのですか
A 本件刑事弁護は,死刑廃止の運動のためにしているのではありません。弁護団は,本件の弁護活動において死刑廃止の主張をしたこともありません。

Q 21名の弁護人は死刑廃止論者ですか。
A そうではありません。廃止論者も存置論者もいます。また,死刑制度の問題点について国民的議論が尽くされるまでは死刑の執行を停止すべきであるという考えの弁護士もいれば,死刑の適用範囲について謙抑的であるべきという考えの弁護士もいます。
 弁護団は必ずしも死刑廃止論者で構成されていないということがお分かりいただけますでしょうか。

続いて、弁護団内の「死刑廃止論者」の代表格と目される安田弁護士が、過去に東京新聞に語った記事から抜粋。
http://web.archive.org/web/20060617145758/http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060508/mng_____tokuho__000.shtml
 裁判を死刑廃止運動に利用しているという批判もあった。「死刑廃止を法廷で考えているとしたら弁護士失格だ。法廷は事実を争う場であって、政策や思想の場ではない。だいたい判決は死刑だろう、と考えて弁護なんてできやしない」
 要するに、光市事件の弁護団内は死刑廃止論者で固められているわけではなく、また弁護団内での死刑廃止論者の代表格である安田氏ですら、法廷と制度に対する闘争は峻別しているのです。
 メディア報道などでは、弁護団は死刑廃止運動の舞台として法廷を利用しているという批判が洪水のように流されていますが、如何考えても、そうは読み取れません。

 では、誰が真に法廷を死刑制度に関する政治闘争に利用しているのでしょうか。
 私の記憶が確かならば、安田氏を始めとする弁護団が最初に叩かれ始めた頃はメディアではまだ「弁護団は法廷を死刑廃止運動の舞台としているのではないか」と推定調でしたが、時がたつにつれていつの間にか「している」と断定調に摩り替わっていました。この間、弁護団は世間に対して特に何も語っていません。強いて言えば安田氏が前掲の、法廷と制度に対する闘争を峻別する発言が東京新聞に掲載されたくらいです。なのにメディアでの表現がいつの間にか摩り替わり、さらに最近のワイドショータイプの番組では露骨に弁護団のみならず死刑廃止論にまで攻撃が加えられています。(私見では、最近は廃止論攻撃の方へ軸足が移りつつあります)
 この現状から考えるに、私は法廷を利用しているのはほかでもなく死刑存続派が廃止派を叩くためにやっていると考えます。

 私は真に公正な判決によるならば、被告が実際に死刑になってもならなくても如何でもいいのですが、偏向した報道を元につくられた偏った世論に対しては今後も疑問を呈し、批判を加えてまいる所存です。そして、そのような世論を司法に持ち込むことに断固として反対し、また現状での裁判員制度導入に慎重意見を申し上げます。

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http://www.geocities.jp/s19171107/DIARY/BLOGINDEX/saiban.html
posted by s19171107 at 20:17| Comment(0) | TrackBack(4) | 時事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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