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2007年12月27日

民放の報道特集番組の構成について

25日夜に日テレ系で放映された報道系の特別特集番組を見ました。

放送の内容は、所謂「社会の不正」を「告発」するタイプで、社会保険庁関係、介護保険料を不正請求する悪質業者、はたまた「イマイ」なる、一歩間違えればただの池沼が悪質業者に電凸する一部始終のまとめなどで、報道といいつつも一種のバラエティーのような番組でした。

私は、ふだんはテレビを殆ど見ず、見たとしてもNHKニュースやNHKスペシャル程度しか見ないため、久々に民放の報道特集番組を見たのですが、違和感ばかり感じました。

最大の違和感は、「告発」の対象―単刀直入に言えば、相手が公務員(社会保険庁)と民間企業(介護保険料を不正請求する悪質業者)―によって取り上げ方に大きな差があるということです。

とにかく、こういう番組では公務員はドンドン叩きます。「真面目に働いている公務員なんて居ない」と言わんばかりの勢いです。一方で、介護保険料を不正請求する悪質業者、即ち民間企業が「告発」の対象になると、ガラリと変わって、必ず「まじめに働く企業もあります」という注が入るのです。

また、民間企業を「告発」する場合では、なぜか大企業やグループ企業の不正は取り上げられません。今回の番組では、捏造した記録を元に介護保険料を不正に請求する悪質業者を取り上げていたのですが、その業者というのが常磐線荒川沖駅(茨城県土浦市)からしばらく行った住宅街の中でひっそりと営業している、職員数20人余りの「荒川沖介護サービス」なる聞いたことの無い事業所なんですよ。

もちろん、この「荒川沖介護サービス」なる事業所の所業だって不正には変わりないのですが、もっと社会的に大きな影響を及ぼし、一時期、一般商業紙の一面においても連日報じられた「コムスン」の問題は何処に行ってしまったのでしょうか。「コムスン」の「コ」の字も出てきませんでした。

この二者の扱いの落差は、昨今の公務員の不祥事とそれに伴う公務員バッシングに乗じた、せこい大衆迎合的番組構成であるな、と思います。

また、この番組そのものとは直接関係は無いのですが、昨今の公務員バッシングの中でも、防衛省とそのほかの官庁へのバッシングにも差があるような気がします。守屋の一件なんて防衛省の官僚、それも事務次官の億単位の汚職であり、且つ防衛省の官僚組織図も犯行の土壌になったと言われているのに。


第二に、番組構成が水戸黄門型というか、単純な善悪二元論の図式を全般的に用いていたことにも違和感を覚えました。

17日の日記において、『年報・死刑廃止2006』を購入したと書き、現在読んでいます。この本は、光市事件に関する弁護団の主張や死刑廃止運動の宣伝など、読み応えのある数多の論文や記事が詰まっており、定価2200円出した甲斐のある本だと満足しているのですが、安田弁護士の『光市最高裁判決と弁護人バッシング報道』というのが収録されています。その中で安田氏は光市事件に関するメディア報道、つまり「被告を殺せ」の大合唱について、「いわゆるポピュリズム、大衆迎合主義と言われるようなものもテレビメディアなのではないかという実感をたいへん強くしている」と書いておられます。そして、その原因について氏は「テレビメディアはわずか24時間しか時間を持っていない。(中略)送る側としては、常に、すべてを捨象して単純明快な図式、つまり善悪という価値のデジタル化、論理ではなく感情というわかりやすさに収れんしなければならない」と書いておられます。

この番組は、一応、独自ではあるものの取材をしているわけですから、「論理ではなく感情というわかりやすさ」とはちょっと違いますが、たとえば、インタビューのやりとりの前後関係をバッサリ切り捨てて、相手方が感情的になった部分だけを切り張りして「逆切れ」とテロップをつける点では、単純明快な図式化に類似するものと言えると思います。そして、こういう傾向はここ数年で、いよいよ進行しているように思います。

以前、確か戴いたコメントへの返信においてだったと思いますが、「庶民の感覚」にウケようとして作られた番組が、「庶民の感覚」の劣化を促し、劣化した「庶民の感覚」に、、、と悪化の一途であることを指摘しました。このきっかけは「庶民の感覚」が不良品だったのか、はたまたメディア報道など、身の回りの諸々の情報が不良品だったのかは分かりませんが、少なくともこの悪循環は間違いなく続いています。画面の前のあなたも、そして私もその悪循環に少なからず影響されているはずです。

この悪循環を断つためにも、得た情報を安易に単純な図式に収めることなく、話の前後の文脈を押さえて適切に消化する能力がいよいよ、必要とされてきているように思います。
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