私は、八戸事件については、光市事件と福岡3児死亡事故の追っかけで手一杯なので、殆ど接する機会も無かったのですが、今回のこの特集を見、その生い立ちなどを知ることによって、光市事件と似ているな、という印象を持ちました。
光市事件の被告人は、12歳のときに実母が自分の目の前で自殺し、また、父親は暴力ばかりふるうアル中で、妻(=被告人実母)死後はフィリピン人と再婚しました。たしか弁護団が依頼した精神鑑定では、精神年齢は11歳か12歳程度で、これは目の前で実母が自殺した衝撃のためではないか、と言われています。
対して、八戸事件では、右翼団体構成員の実父が被疑者小学2年のときに恐喝未遂で逮捕され、それ以降、実母が家計を支えるために夜の商売をはじめ、いつも酒臭い。子どもの面倒を見切れないとのことで、2年生から5年生まで養護施設に強制収容されていたそうです。
小学5年のときに被疑者は養護施設から帰ってきたそうですが、実母は夜の商売の関係で男が出来、交際。また父親はこの時期に2度目の逮捕を経験している。
さらに中学3年のとき、実母が交際している男に対して「うちの長男はちょっとアレだ」という会話を耳にしてしまい、自殺未遂を図っている。このように、「母親の愛情」というものが乏しかった。
そののち、引きこもりがちになっていたため、父親が右翼活動の傍ら営業している屋台で働いた結果、少しずつ更生しつつあったところで、実父が3度目の逮捕。父親も駄目人間。
全く同じとは言いませんが、環境的には光市事件とは似たようなものがあると思われます。
にもかかわらず、この二つの事件の取り扱い方は全く違います。
光市事件では、被告が何を言っても、それが逮捕直後の警察調書や家庭裁判所調書に書かれていることでも、はたまた証拠と検察主張の科学的矛盾が明らかでも、完全に無視されています。一方、今回の八戸事件に関する『スーパーモーニング』の特集におけるスタジオの出演者たちは、たとえば大谷氏の「こんなこと、大人でも耐えられるだろうか」とか「こんなことを「耐えろ」といっても無茶だ」といった、「犯罪は犯罪だけど同情を禁じえない」といわんばかりの発言に対して、誰一人として反論しませんでした。
はっきり言って、私は八戸事件と光市事件、どちらが凶悪性が高く、確たる犯意があるかといえば、現在分かっている範囲でいえば、八戸事件の方がより重大であると思います。一方、「犯人」の育った環境の劣悪さについては、アル中DV親父の暴力の日々と、実母が自分の目の前で自殺したということを考えると、光市事件のほうが劣悪な環境であったと言わざるを得ません。
八戸事件の被疑者に対して「同情」するなら、より劣悪な環境で育ち、犯行自体の凶悪性については八戸事件より低い光市事件の被告人に対しては、同等以上の「同情」をするのが筋ではないかと思いますが、現在執筆準備中の、綿井・河井トークショーにおいて、たしか河井弁護士が、「あるメディア関係者の発言」として、「いくら弁護団が精力的に情報公開しても、メディアはもはや報じることはできない。視聴者の反感を買い、弁護団に向いていた攻撃の矛先がメディアに向いてしまうからだ」という主旨のことを仰っていたことを考えると、光市事件については、世論が沸騰しすぎて、もはや振り上げた拳を絞首台の床を落とすスイッチの上に下ろすしかない状態なのでしょうが、似たような事件であるにも関わらず、ここまで扱いが違うというのは、メディア報道の信頼性にも関わる重大な現象であると思う次第です。
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いずれにせよ、強大な影響力を持つマスコミ(の一部の人間)の気分や面子で、重要な問題や少なくない数の人生が狂わされてしまうのは怖いですね。
これまた随分と放置してしまって申し訳ありません。
私も、被害者と加害者が身内であったことが大きいと思います。光市事件の死姦については、八戸事件も母親の腹を切り裂いて人形を詰め込んでいたりするので、猟奇的という点からいうと、八戸事件のほうが悪印象があるように思いますが。
この二つの事件の報道を比較することは、個人的には大きな意味があると思いますので、今後も八戸事件の行く手を見守りたいと思っています。
>「amanoiwato」さん
なるほど、そういう見方がありましたか。
流石に「何をしても構わない」というほどではないでしょうが、確かに、「赤の他人」に迷惑をかけるほうが、「身内」に迷惑をかける場合よりも激しく叩かれるという傾向はあるかもしれません。そういう視点で刑事事件を見たことがなかったので、ハッキリはいえませんが。。。
出来れば起きてほしくは無いですが、きっとまた身内殺しが起きると思いますので、そのときには、そういう視点で見てみたいと思います。
コメントありがとうございます。
お返事が遅くなってしまい、申し訳ございません。
そうですね、生育環境は大きな要因としてあると思います。
ただ、親子関係だけが人間形成に影響を与えるわけではありませんよね。周囲からまったく隔絶した世界で暮らしているわけではないのですから。
もちろん、本人の生来の性格もあるでしょう。
大切なのは、複合的な要因が相互作用的に影響して、人格形成がなされている以上、それに対する対応もまた、複合的に行わなければならないということだと思います。