昨今騒がしい国際的な捕鯨論争は、「捕鯨」を単純な漁業問題と考えた場合、科学的データに基づいて検証すれば解決する単純な問題なはずです。しかし実際は、この対立は泥沼化の一途を辿っています。これは、この捕鯨問題は最早、政治問題となっているからです。3月6日づけの記事にて掲載した、ギャレット豪環境相の発言には、明確に「国益の問題」とありますし、日本側も「シーシェパード」など、狂信的反捕鯨団体の抗議活動に対して、以下のような対応を取っています。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080305k0000m010069000c.html
政府は南極海で日本の調査捕鯨に対し反捕鯨団体「シー・シェパード」による妨害行為で負傷者が出た事態を受け、抗議船の旗国であるオランダと母港があるオーストラリアに抗議し、再発防止策の徹底を求めた。6日からロンドンで始まる国際捕鯨委員会(IWC)「中間会合」でも妨害活動を急きょ議題とし、再発防止の必要性を訴える方針だ。「シーシェパード」の組織としての総本拠地はアメリカであるので、抗議するなら船籍があるにすぎないオランダや、出先の母港があるに過ぎないオーストラリアより先に総本拠地の存在するアメリカ政府にすべきです。
国際世論も考慮し妨害問題で必ずしも先鋭的な態度を政府は取ってこなかった。しかし、「妨害行為は目に余る。日本はもっと毅然(きぜん)とした対応をすべきだ」(二階俊博・自民党総務会長)との指摘が与党から出ている。このため国内の反発も配慮、中間会合で提起することにした。高村正彦外相は4日の記者会見で「公海上で合法的にやっていることに、暴力で主張を通そうとはとんでもない。度が過ぎている」と述べ、批判を強めた。
政府は抗議船の妨害行為が発生した3日、捕鯨への理解を求める「捕鯨セミナー」の席上、小野寺五典副外相が遺憾の意を表明。外務省の小田部陽一経済局長らがオランダ、豪州両大使に強く抗議を申し入れた。IWCは近年、捕鯨支持国と反捕鯨国との対立が深まり議論が停滞しているが、6日からの中間会合でも「悪質な妨害行為の実態を明らかにし、調査捕鯨をアピールする良い機会としたい」(外務省幹部)考えだ。
「アメリカには出来る限り抗議しない」という、日本外交の典型的パターン、日本政治の体質が顕著に現れており、やはり政治問題であると考えて間違いありません。
この問題を政治問題という視点で見ることは、日本のブログ界でもかなりスタンダードになっており、この視点を持つ方々が多いことは結構なことだと思います。
しかし一方で、政治問題特有の現象、つまり、第一に「自国贔屓化の現象」第二に「単純二項対立の構図化」が見られつつあります。
「自国贔屓化の現象」については、私みたいに、「別に捕鯨なんてどーでもいいや」と思っている人間としては、特別に捕鯨擁護派を贔屓しようなんて思わないので、捕鯨擁護派の主張のなかに合理性が見出せる場合は擁護派に立ちますし、逆に反対派の主張のなかに合理性が見出せる場合は反対派に立つ、つまり、比較的、立場を自由に変更して考えることができるのですが、「これは白人主義との戦いだ」とか言っちゃっている人なんかは、なかなか自由な思考がしにくいんじゃないかと、他人事ながら心配しています。
政治問題というのは、立場を自由に変更して考えることが必要です。政治的立場をコロコロ変える人は、よく「日和見」だとか言われて批判されますが、私としては、立場変更までの思考が論理的であり、また立場を変更したならしたで、ある特定の立場をとっている限りにおいては主張を一貫させるならば、別に批判されるいわれはないものと考えています。
その点、「これは白人主義との戦いだ」とか、妙なプレッシャーを自分に掛けて言論活動に精を出している人たちは、今一度、政治問題を考える際に必要な「立場を自由に変更して考えること」を思い出していただきたいと考えるとともに、こういう妙なプレッシャーをこじらせると、終いには「シーシェパード」のような頑固で狂信的な思考にいたる危険性があることを、十分に理解していただきたいです。
「単純二項対立の構図化」について。こういう構図は、特に「これは白豪主義との戦いだ」とか発狂している方に多く見られる現象で、「ノルウェーの捕鯨活動に対して反捕鯨白人国家は抗議しない」と主張しているように、「差別主義に基づき日本人による捕鯨を絶対に反対する白人と、文化防衛のために戦う日本人」という、なんか幼稚園児向けヒーローショーみたいなアホらしい論理を大真面目に振りかざしています。
しかし、実際の政治問題においては、ある議題に対する賛成派・反対派に分かれたとしても、派内において細かい論が統一していることはまずなく、幼稚園児向けヒーローショーのような単純二項対立が完全に成立することはありません。
この捕鯨問題にしても、反対派には、「調査に捕殺は必要ないから捕鯨をやめろ」という考えに基づき調査捕鯨に反対する立場を取る人や、あるいは、下記記事のように、調査捕鯨はあきらめてもらうが沿岸捕鯨は許可するという立場を取るがゆえに、調査捕鯨に反対する立場を取る人や、はたまた「シーシェパード」のように、あらゆる捕鯨に反対する人など、一口に「調査捕鯨反対派」といっても、実に様々な理由に基づいています。
http://www.asahi.com/international/update/0309/TKY200803090151.html
捕鯨賛成派と反対派が激しく対立する国際捕鯨委員会(IWC)の正常化を話し合う中間会合が8日までロンドンで開かれ、日本が提案した、米国の反捕鯨団体シー・シェパード(SS)を非難する議長声明を全会一致で採択し、閉会した。また、ノルウェーについても、同国は商業捕鯨停止の決議に異議を申し立てており、規約では、正式に異議を申し立てれば決議には拘束されないと明記されているために、「反捕鯨白人国家は抗議しない」のです。このように、反捕鯨と白人主義とは関係ありませんし、「シーシェパード」に至っては、ノルウェーの捕鯨船を沈めた過去もありますので、特別に日本を狙っているわけではありません。
今回の中間会合は、54カ国、NGOなど35団体の代表者らが出席。「必要以上に投票を行わない」「問題が起きたら冷却期間を置く」「テーマごとの小部会設置を検討する」など、九つの提言をまとめた。6月にチリ・サンティアゴで開かれる年次総会に提案し、採用の可否を決める。
議長声明は、日本の調査捕鯨船「日新丸」がSSの船から薬品入りの瓶を投げられ、海上保安官ら3人が負傷した事件について、「海上での船舶の活動に関する人命と財産に危険を及ぼすすべての活動は受け入れられない」と非難している。
9日付の英インディペンデント紙は、この会合で、沿岸での商業捕鯨を認める代わりに日本が独自に行う調査捕鯨をあきらめる案が議論された、と報じた。この案は、先に東京であった捕鯨に関する国際会議で議論され、今回アルゼンチンとオランダが共同で提案。捕鯨賛成、反対の両派から歓迎されたという。
ただし日本の水産庁は会合後の会見で「沿岸捕鯨と調査捕鯨は別物。交換取引するようなものではない」と述べた。
同会合で、反対派の代表格オーストラリアは8日、IWC改革案を示し、クジラを殺さない調査を日本と一緒に南極海で行うことや、調査捕鯨をIWCの合意に基づいて行う基準を設定することなどを提案した。
先ほども申し上げましたが、この問題はもはや単純な漁業問題ではなく、政治問題です。だからこそ、政治的なものの見方によって判断しなければなりません。当ブログでは、今後も捕鯨問題について気が向き次第取り上げますが、単純な漁業問題ではなく、政治問題でもある、という視点で考えてまいります。
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http://www.geocities.jp/s19171107/DIARY/BLOGINDEX/hogei.html


