会場は六本木の三河台公園。昨年9月の反中共デーの集会が行われたのと同じ場所で、参加人数は、在日チベット人や日本人など、数百人〜1000人くらいいたそうです。


(これ以降の全ての写真はクリックで拡大します)
「反中共デー」のときは公安と参加者が同数くらいで、集会の内容も、「反中共」のはずなのに開会のときに『君が代』を斉唱するような妙なものだったので、公安から容赦なく写真撮影されましたが、今回は参加者が圧倒的大多数で、写真撮影も抑制的でした。まあ、「アムネスティ日本」が参加している限りは、同団体を「サヨク」として忌み嫌うウヨ系組織が参加することも余り無いし、ちょうど20日にも同じ場所でウヨ系主体の抗議集会が開かれたばかりなので、公安も余り重視していなかったんでしょうかね。
ただ、そんな中でも妙な連中は紛れ込むもんで、、、

なぜこの場に旭日旗とZ旗が、、、Z旗については、中共覇権主義との「決戦」の覚悟という肯定的解釈も出来ないことは無いのですが、実際たたかうのは他でもなくチベット人自身であり、もし日本人がチベット人のかわりに中共覇権主義とたたかったら、それってソ連のアフガン侵攻の口実と同じになってしまいます。旭日旗との組み合わせが良くわかんないですねー
日章旗なら分かりますよ。チベットの旗と並べることによって、日本・チベット両人民の連帯を示すことになりますし、現に↓のように両国旗がならんでいますから。


では、集会本編の報告を。

まず、この集会の目的として、平和的なチベット人民のデモに対する中国当局による武力弾圧をしたことについて訴えることであると確認し、続いて犠牲者に対して1分間の起立黙祷を捧げました。
続いて、ダライ・ラマの声明とチベット亡命政府内閣声明が読み上げられました。

「チベット問題を考える議員連盟」の牧野氏から。
チベット本土で対話と非暴力の方法論で頑張るチベット人民への連帯の拍手につづき、この集会は、他のいかなる集会とも異なり、非暴力と対話によって民族のアイデンティティを取り戻そうとしているチベット人との連帯の集会である以上、民主的で品の良い集会にしたいと呼びかけました。
また昨今の情勢について、チベット自治区内で僧侶が投石などをする映像が出てきていることについて、これらは坊さんで無い人も多く、そういう人によって暴動が扇動されたり、僧侶が逮捕されているとのこと。また、商店街を破壊している「市民」のなかには、本当にラサ市民(=チベット族)なのか分からないのが多く含まれており、情報が錯綜しているが、「我々の友人であるチベットの皆さんの良識を最後の最後まで信じていただきたい」とのことです。牧野氏自身は、知っている限りのチベット人はダライ・ラマの非暴力対話主義の立場に沿っているため、中国の挑発策動なんかには乗らない人たちであると信じているらしく、昨今報道されるチベット人青年による暴力闘争などは「ありえない」らしいです。
私は、今回のチベット民衆蜂起は「中共覇権主義vsチベットの被抑圧民」という構図で考えると余りにスケールが大きすぎて自分の脳では処理しきれないので、単純に「強盗殺人犯vs被害者」という構図で理解しようと努めているのですが、牧野氏のこの発言を聞いて、司法関連記事の一環として進めてきた「感情屋習性研究」のときに見出した「感情屋の思考回路」、すなわち、「根拠の弱い被害者無謬信仰」と何となく似ているなぁと感じました。
以前から当ブログをご覧になっている方なら、説明無しでお分かりいただけるとかと思いますが、所謂「感情屋」の方々は、メディアのセンセーショナルな殺人報道などに際して、激烈な義憤をし、それによって深刻な思考の短絡を引き起こしております。そして、その思考的短絡が事件の真相を解き明かし、適切な量刑検討に欠かせない事実確認や今後の法体系のあり方を考える上でこの上ない障害になっていると再三指摘してまいりました。また、「根拠の弱い被害者無謬信仰」が所謂「プロ被害者」「プロ遺族」を生む土壌になっていると指摘してきました。その点、「我々の友人であるチベットの皆さんの良識を最後の最後まで信じ」るというのは、今回の事件の真相を明らかにしてゆく上での障害となり得、良くない姿勢であると言わざるを得ません。
確かに、中共覇権主義の今までの所業・やり口を考えると、今回のチベット人民への血の弾圧についても、その口実作りのために、かなりの自作自演をしているであろうことは想像に難くありませんが、それはあくまで想像であり事実であるとは限らないことを忘れてはなりません。
当ブログでは昨年秋から刑事裁判について記事を書くことが増えましたが、その際に、私は常に「推定無罪」の立場で物事を考えてきました。これは、事件の真相を明らかにするためには、不確実な情報を安易に鵜呑みにしてはならないからです。私は、この考え方を堅持するからこそ、刑事事件報道に際しては、被害者の証言を鵜呑みにせず、しっくり来ないところについては遠慮なく指摘してまいりました。今回のチベット問題についても、(パレスチナ問題もそうだが)先ほど申し上げたように「強盗殺人犯vs被害者」という構図を以って真相を理解しようと努めているので、今までどおり、中共の所業についてもあくまで「推定無罪」の立場から考えており、被害者であるチベット人民の主張についても、鵜呑みにするつもりはありません。ゆえに、新華社電も亡命政府発表も「チベット人権民主化センター」などのNGO発表も平等に扱っています。もちろん、一部では「中国の東スポ」なんて呼ばれている『大紀元』も等しく情報源として活用しています。
つづいて、中国の温家宝首相の「ダライ・ラマは分裂主義者」とする宣伝については、中国の暴力に対して民族のアイデンティティを取り戻す運動が、どうして「分裂主義者」として非難されなくてはならないのか、正当な要求ではないか、と訴え、真実に基づき、正当な要求をするチベット人民と最後まで連帯すると訴えました。
「真実に基づいて」考えるなら、ラサにおける破壊活動を誰がやっているのかについて、「我々の友人であるチベットの皆さんの良識を最後の最後まで信じていただきたい」という一言で片付けるのはどうかと思いますが、「中国の暴力に対して民族のアイデンティティを取り戻す運動が正当なものである」という主張には全く異論が無いので、この点については全面的に賛同し、チベット人民と連帯することを言明いたします。
また、今回の集会の目標について、第一には、今日でのチベット全土における中国における残虐な行為・文化破壊を即刻やめさせることであり、第二には、中長期的な問題として、中国政府に対してチベットを守る、チベットに対する人権弾圧を徹底的にやめさせる、日常生活を取り戻すために、中国政府に訴えかける(注:「独立」については一言も触れていないからミスリードしないように)ことにあるとしました。
今後、実施すべきことは、第一に中国政府に対してチベット人民の思いをぶつけること、第二に日本政府に対してチベット問題解決のための毅然とした態度を取らせること、第三に国連に対して呼びかけることであると訴えました。
続いて、在日チベット人の方からの発言。
まず、チベットが世界中でデモをしている背景について、チベット人は北京オリンピックに反対してデモを起こしているわけではなく、チベット人は真の自治を求めてデモを起こしている。中国はオリンピック開催が決まったとき、真に人権について真剣に取り組むべきだったのに、チベットの人権問題は全く解決していない。チベット人は苦しみと絶望の中、命を懸けてデモをしていることを理解してもらいたい。
また、中国政府は一連のデモはダライ・ラマが仕組んでいるとしているが、「これまで中国と対話により平和的な解決を目指してきたダライ・ラマ法王が、そのような策略を仕組んだとはとても考えられない」そうです。
更に、中国はチベットにおける外国人の自由な取材を制限している。「チベット人」の暴力的行為ばかり報じられるが、中国人が何をしているか報じられることは無い。日本のメディアはチベットで何が起きているか勇気を持って報じてほしいとのことです。
うーん、外国人が締め出された現状でどうやって取材しろって言うんだろう。。。新華社電や亡命政府発表、「チベット人権民主化センター」などのNGO発表を報じる現状が、良くも悪くも限界じゃないかとも思うんですけどねー
そして、今この瞬間も、罪の無いチベット人が暴力を受け、殺害されているかもしれない。今日を機会にチベット問題について少しでも興味を持ってほしいとのことでした。
再び牧野氏。日本国内での運動、特に国会議員の取り組みについて報告。
もともと日本国内ではチベット問題についての関心はお世辞にも高いとはいえなかったものの、昨今の全国での運動などによって、国会内でも先日、自民・民主・国民新党・社民党など各党の関係者が取り組み、またあらゆる宗教関係の人たちも取り組みはじめたそうです。更に、文化人もこの問題についていち早く立ち上がっているとのことです。
そのなかで、映画監督の、名前は忘れたけど誰かさんがマイクを取りました。
氏はダライ・ラマらチベット人とも直接接触してきたそうで、今回の中国政府の反ダライ・ラマ宣伝については、「なんと言う偽りを平然と」という感想を抱き、怒りを越えて哀れみすら感じるくらい、中国は道義的に追い詰められている証左であると訴えました。
また、インドなどに亡命したチベット人の少年少女たちは、軽装のヒマラヤ越えなどに際して、兄弟などを失うなど、普通ならトラウマになるようなことがあったにもかかわらず、人間的感情・子供的純粋さを失っておらず、こういう子供たちがいるチベット人の将来は明るく、これこそがチベット人の精神文化であると話し、中国の弾圧がこういう精神文化を破壊していると指摘しました。
そのあとは北海道出身の参加者と熊本からきた参加者が何かつまんないこと言ったあと、最後にアムネスティだったかが要求文を読み上げました。
つづいてデモ行進。
こんなに人がいると出るのも大変だ、、、

コースは、↓の地図の黒線。

三河台公園発、笄(こうがい)公園着で、40分くらいかなー?
デモ参加者は、大体は「フリーチベット」とか「チベットに人権を!」みたいに、今回の集会において在日チベット人が訴えたことや、ダライ・ラマが以前より繰り返し主張してきたことを叫んでいたのが大半なのですが、やっぱり空気の読めない子はいるようで、、、
音声ファイル
このほかにも、「北京オリンピックをボイコットせよー」みたいな、チベット人はそんなこと一言も言っていないことを便乗して叫ぶ始末でした。
私がちょくちょく覗かせてもらっている『土曜の夜、牛と吼える。青瓢箪。』さんとこの、チベット問題を政治利用しているのは誰か。という記事で、以下のようなくだりがあるのですが、私も、今回のデモにおける「空気の読めない子」を見る限り、純粋なチベット人民との連帯以外に、何かの目的を持っている人もいるように思う次第です。
民族弾圧許すまじとの建前を元に、単に中共を攻撃したいだけなのではないのか?という疑念がどうしても拭い去ることができないのだ。あるいは、某所でもちょっと話題にしましたが、脳内で事前に設定した「チベット人」像にあわせて、「きっとチベット人はこう考えているに違いない」と勝手に判断しているんでしょうかね。それなら、まだいいんですけどね。





そういえば、特定失踪者ナントカ会の荒木何某そっくりなのがいたなー
写真撮っといたけど、人違いだったら困るので、今のところは掲載はしません。でも、そっくりだなぁ、、、
終着地

最後の色々な挨拶と、チベット国歌斉唱で終了しました。
以上、報告おわり。
おことわり
今回の報告記事では、参加者の主張にも一部、疑問を呈しました。以前、刑事裁判関係の記事において書きましたが、どうも日本人相手にこういう話をするとき、被害者の立場や主張に疑問を挟んだりすると、「犯罪者の逃げ口上の片棒を担ぐのか」とか「悪人の言説に理解を示す奴は無条件に悪人だ」とか、単純思考(というか思考停止)で噛み付いてくる困った子が出てくるので、今回のチベット問題について、改めて立場を表明させていただきます。
以前の記事にも書きましたが、中共は自己のチベット侵略・占領について以下のように正当化しています。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2008031700268
チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が16日の記者会見で「文化的虐殺」とチベット問題で中国を非難したことに対し、国営新華社通信は17日、「全く無意味」とするチベット自治区指導者の反論を伝えた。また、朝鮮日報は以下のように分析しています。
自治区人民代表大会のレグチョグ常務委員会主任は「農奴制の旧社会には『市民』の概念は存在さえしなかった」と述べ、共産党政権によってチベット人民が解放されたと指摘。チベット寺院など伝統文化も保護されていると強調した。
http://www.chosunonline.com/article/20080317000039
チベット暴動:中国はなぜチベットに執着するのかこれらの記事については、前者は覇権主義者の言説と瓜二つです。また、後者についても、あくまで可能性なので鵜呑みにするつもりはありませんが、チベット資源を得るがためのチベット占領継続であるならば、どうみても覇権主義です。
インドとの衝突を防ぐ緩衝地帯とネパールの北側に位置するチベットは、世界で最も高原に位置し、「世界の屋根」と呼ばれる。チベット語で「神の土地」を意味する中心都市ラサも海抜3700メートルにあり、チベット自治区の平均海抜は4000メートルを超える。
険しく荒涼とした大地が大部分を占めるチベットだが、中国にとっては大きな財産だ。面積は韓半島(朝鮮半島)の約6倍に当たる123万平方キロ。天然資源もダイヤモンド、マグネシウム、鉄、石炭、クロムなど70種類以上の埋蔵が確認されており、経済的価値が極めて高いとされる。
2006年7月に青蔵鉄路(青海省西寧−チベット自治区ラサ)が開通して以降、沿線ではスズ、鉛、亜鉛の大規模な鉱脈が新たに16カ所発見された。このうち5カ所では合計でスズ2000万トン、鉛・亜鉛1000万トンの埋蔵が確認された。さらに森林、木材、水資源、太陽熱資源などが未開発の状態で残されており、超大型のウラン鉱山も複数ある。資源安全保障に総力を挙げる中国にとってはまさに「宝の箱」だ。
軍事戦略的な価値も高い。高原地帯は地理的特性から兵器の配備や開発に理想的だ。中国の原子力研究の中心機関である「第9研究所」(西北核武器研究設計学院)は数年間、チベット北東部に拠点を構えていた。チベットはインドとの衝突を防ぐ緩衝地帯として、軍事戦略的にも中国政府が決して放棄できない地域なのだ。
専門家の多くは、「チベットの経済的、軍事的価値が高い上、ウイグル族など他の少数民族の分離独立要求が噴出する可能性があるため、中国政府が独立や自治に関する要求を容易に受け入れることはない」とみている。
私は以前より、自身は左翼であり、人権派であり、反覇権主義であり、社会主義かぶれであることを明らかにしてブログを運営してきました。だからこそ、今回の問題については、左翼として、人権派として、反覇権主義者として、社会主義かぶれとして、中共の所業については極めて厳しい立場を取り、被抑圧者たるチベット人民と連帯するものであることを、改めて言明しておきます。
参加したかったのですが仕事の都合でいけず、こうした詳細な画像入りのが読めてよかったです。助かりました。それにしてもやっぱりアムネスティ系でもみょーなのが混じっていたんですね。
個人的に憂慮しているのは、民族問題というのは当然のことながら一朝一夕には解決できないわけで、話題に上らなくなるうちに忘れ去られていく。目覚めて「その先」というのを考えている人がどれだけいるのかなということです。いつまでも変わらねえと勝手に失望する人とか出てこないかな…と心配してます。
それにしてもご紹介いただいた記事(ありがとうございます)見事に大量のブクマがつけられましたよ。それにしてもニュ速で単独スレまでたてられるとは…(苦笑)
>放蕩息子さん
お役に立てて光栄でございます。
仰るとおり、民族問題は一朝一夕では解決しない問題であり、全世界のあり方と密接に関係する問題であります。私は、別の記事で書いたとおり、社会主義的・チュチェ思想的解決を模索したいと思っています。
大量のブクマ拝見しました。ぜーんぜん話の分かっていないブクマコメントもあって、なんというか。。。というのが正直な感想です。本当に、いろんな意味で一朝一夕には解決しない問題だと、改めて感じました。