普段、当ブログではコメントへの返答はコメント欄に対して行っておりますが、今回については、図の併用やカラーフォント使用の必要があると判断しましたので、このように記事形式でご返答いたします。(コメント欄はタグ類が殆ど使えないため)
まず、4月6日20時11分づけで戴いた下記について。
袖のボタンの形状と、それによって付けられた傷跡の形状について、もっと具体的に説明して下さい。実のこと申し上げると、件のトークショーではあのように説明していただけなので、以下の返答については、当トークショーでは触れられてはおらず、弁護団資料等から引っ張ってきたものであることをご了承の上で、ご参考までにご覧ください。
写真が暗くて見難いです。
まず、2007年4月19日づけ(差し戻し控訴審段階)の日本医科大教授による、1999年に山口大学で作成された解剖鑑定書を如何に読むべきかとする「鑑定書」(控訴審弁護団資料46〜52ページ)より。
山口大鑑定では、「左側頚上部に1.2x1.2cm大の表皮剥脱」(同48ページ)とあります。これの考察として同教授は、「前頚部左側や左下顎部の表皮剥脱については、(被告の)右手による圧迫の際に右第1指によって生じたとの解釈も可能であろうが、腕締めの際、作業服の袖を手繰り上げるようにしていれば、袖口の止め具(金属製、直径約14mm)が被害者の頚部に作用した可能性は否定できず、そうだとすれば、これら表皮剥脱が類円形を呈しているのも納得できるものと考えられる。」(同51ページ)とした上で、結論として、「被害者にみられる創傷の成傷機転としては、検察側の主張ではいくつかの不合理な点があるが、弁護側の主張にはそのような不合理性は見出されず、成傷機転を無理なく説明しているものと認められる。」(同51ページ)としています。
つづいて、同教授が、2007年5月29日づけ(差し戻し控訴審段階)で広島高裁に提出した、本実験結果報告書(控訴審弁護団資料57-61ページ)から。
この実験の目的は、弁護・検察双方の主張どおりにやった場合、被害者女性の遺体に実際にあったとおりの創傷が出来るかを実験したものであるとしています。
弁護人は、「被害者の背後から左腕を回して首にかけ、プロレスの技であるスリーパーホールドの形で絞めつけた」としており、この場合の再現実験をしました。
まず、長袖をまくらない場合。
(控訴審弁護団資料59ページの再現実験の写真より引用 クリックで拡大)
袖がそのままの場合は、スリーパーホールドをしても跡はつきません。
もっとも、控訴審弁護団資料51ページには、前掲の4月19日づけ鑑定書の記載として「あるいは、作業衣左上腕部のポケットにボールペンの止め具などボタンと類似の形状のものが装着されていれば、袖を手繰り上げるまでもなく類円形の表皮剥脱が形成される可能性はあろう」としていますが。
袖をまくった場合。
(控訴審弁護団資料60ページの再現実験の写真より引用 クリックで拡大)

(控訴審弁護団資料61ページの再現実験の写真より引用 赤丸は私がつけました クリックで拡大)
この実験の結果、写真のように被告が袖をまくって首を絞めたならば、ちょうど、被害者女性の遺体左顎の表皮剥奪の部分に袖口のボタンがあたるそうです。
そして、左顎の表皮剥奪と袖口のボタンは、大きさも形状も、ほぼ同じであるそうです。
当時、被告が袖をまくっていたか否かについては分かりません(資料をもっと読めば書いてあるかもしれませんが)が、前掲の4月19日づけの鑑定書にもあるように、検察官主張と弁護人主張、どちらが客観的証拠をより合理的に説明しているかというと、弁護人の主張の方が合理的であるように思われます。
つづいて、同日20時35分づけで戴いたほうのコメントについて。
扼痕の図面なんだけど、なんか上告審の時の図面と違ってますよね。控訴審弁護団資料41ページの図は、2006年4月27日づけの、元東京都監察医務院長による鑑定書より引っ張ってきたものです。つまり、上告審(最高裁審理)における弁護団提出資料です。
特にBの親指の痕の位置と向きが・・・。
それと気になっていたんですけど、上告審の扼痕の図、一番下の蒼白帯の長さが約11cmで、その上の蒼白帯の長さが約6cmと約5cmも異なるのに、ほぼ同じ長さで描かれていたのは何故?
こんなこというとアレかもしれませんが、単に元監察医務院長に絵心がないだけなのかもしれません。
仰る「上告審の扼痕の図」というのは、以下のことでしょうか。
(『光市裁判 なぜテレビは死刑を求めるのか』63ページより引用 クリックで拡大)
こっちのほうが絵心ある図なので、あの記事では、こちらのほう引用すべきだったかもしれませんね。
6cmの蒼白帯と11cmの蒼白帯の長さが殆ど変わらないというご指摘については、単に一番短い3.2x1.0(単位:cm)の蒼白帯が小さすぎない最小の長さで書くと、11x1.3(単位:cm)の蒼白帯が相対的に長すぎて、正面図だと入りきらないからじゃないですかね。トークショー報告記事の第2回でご紹介した、控訴審弁護団資料65ページの再現実験の写真を見る限り、蒼白帯は首の後ろのほうにも回り込んでいるように見えますし。
(控訴審弁護団資料65ページの再現実験の写真より引用 クリックで拡大)
とりあえず、現段階での返答は以上であります。また何かありましたら、私は弁護団とは全く関係のない立場の人間ですので、知っている部分と知らない部分が当然ありますが、コメントいただければ、可能な限り、返答いたす所存です。
>直径1・2センチの丸い傷は袖口ボタンの大きさとほぼ同じだという。さらにその拡大写真からは「傷の中にもう一つ小さな輪のような傷跡」が見えるという。
>当時被告が着ていたものと同じ作業服を入手した弁護団はそれを見せてくれたが、確かにボタンの中にもう一つ輪がある。
つまり、二重丸みたいな形の傷なのかな?
もしそうだとしたら、そのような形の傷を親指の痕だと解釈した上野正彦って・・・一体・・・何を見ていたのかな?
>蒼白帯が相対的に長すぎて、正面図だと入りきらないから
>再現実験の写真を見る限り、蒼白帯は首の後ろのほうにも回り込んでいるように見えます
一番下の蒼白帯について、最高裁弁護側弁論要旨には「4)左側頸部にかけて弧状をなす幅1.3cm、長さ約11cm」と書かれている。
また補充書には「これは右第1指と右第2指の手掌面が連携して丸い首回りに密着して圧迫したためで、他の指より長さが長くなっている」と書かれている。
つまり、一番下の蒼白帯のみが右側頸部内に収まらず左側頸部内にハミ出ているということである。
従って、延長は頸部内側なので正面図でも描けたと思います。
>つまり、二重丸みたいな形の傷なのかな?
でしょうね。
>もしそうだとしたら、そのような形の傷を親指の痕だと解釈した上野正彦って・・・一体・・・何を見ていたのかな?
あれ、上野氏そんなこと言っていましたっけ?
今、控訴審弁護団資料p41-p43の2006年4月27日づけの上野鑑定書を読み返しましたが、両手親指による喉仏付近に対する攻撃については死体所見からは見られないとして否定した上で、検察主張どおりならば、被害者左顎の表皮剥脱は被告の第1指(親指)になり、その上に右手が乗って両手で首を絞めたことになるが、そうすると被害者の首の左側面にある表皮剥脱の説明がつかないので、検察主張の状況下での犯行ではなかったのは明白だ、としています。(p42)
左顎の創傷を「指の跡」としたのは、山口大の検死員じゃないですかね。。。
>つまり、一番下の蒼白帯のみが右側頸部内に収まらず左側頸部内にハミ出ているということである。
>従って、延長は頸部内側なので正面図でも描けたと思います。
そうですか。確かに、11cmは結構長いですからね。しかし、私の持っている資料からじゃ、その辺の事情は分かりかねます。。。すみません。。。
その辺の追及の続きは、ご自分でブログなり作って、そちらでやってくださいな。
なんで最後の写真だけカラーで他は白黒なんだ?
長いこと放置してしまっていて申し訳ありません。
>「はてな」さん
さあ、そんなこと聞かれても。
>あれ、上野氏そんなこと言っていましたっけ?
上野が「これは右手で口を塞いだ時に親指が食い込んでできた傷だ」と言った事はスルーかよ。
都合の良いヤツだな、お前wwwww
>おいおいさん
すいません、単純に私の勉強不足です。申し訳ありません。よろしければ、情報源となる書籍あるいは新聞記事等をご教授いただけると幸いです。
なお、「スルー」と仰いますが、あなたでも知っているようなことを、こんなところで私ごときが隠蔽したところで何の意味もありません。私はそれほど非合理的な思考回路はしていません。先にも申し上げたとおり、単純に私の勉強不足です。